斎藤アレックス氏が「NISAは海外資産ばかり」と指摘

11月10日の衆議院予算委員会で、新NISAによる海外への資金流出がテーマになりました。

日本維新の会に所属する斎藤アレックス政調会長が、金融政策に関する答弁において、「NISAの資金残高の約60~70%が海外資産で運用されている」と問題提起したのがきっかけです。

斎藤政調会長が続けて言うには、「フランスのPEAは投資対象をEUEA(ユーラシア経済同盟)域内に限定。イタリアのPIRも投資の70%が自国に拠点のある企業に投資する制限がある」ということでした。フランスPEAも、イタリアのPIRも、両方とも個人が投資によって得た収益に対する税金を優遇する制度で、確かに両制度とも税金を優遇する一方で、斎藤政調会長が言うように、投資対象には制限が課せられています。

この点、日本のNISAは国内外の株式、それらを投資対象とする投資信託を自由に購入できます。国内株式に限定するといった投資制限は、いっさい設けられていないのです。

そのため、どうやらNISAを介して海外の株式市場に相当程度の資金が向かっていると考えられます。それはeMAXIS Slimの米国株式(S&P500)や全世界株式(オール・カントリー)の純資産総額が、18兆272億円(11月27日時点)もあることから分かります。ちなみに公募投資信託の純資産総額が多い順にランキングすると、上位20ファンドのうち、日本以外の国・地域に投資するファンドが19本を占めています。の19ファンドの純資産合計額は44兆円にもなり、この数字だけでも、かなりの金額が海外に流出していることが分かります。

斎藤政調会長の発言は一理あります。

たとえばイタリアのPIRがなぜ、ポートフォリオの70%以上を自国(イタリア)に拠点のある企業に投資するという制限を課しているのかというと、単なる投資税制優遇措置というだけでなく、イタリア国内経済の成長を刺激する目的で設けられている制度だからです。

しかも、70%のうち最低21%は、イタリアの主要株価指数に含まれていない、より規模の小さな企業に投資しなければならないというルールも設けられています。

そもそも日本のNISAにはどんな目的があったか

一方、日本のNISAにはどういう政策目的があるのかというと、恐らく2つに大別できると思われます。

ひとつは個人の資産形成の支援です。「老後2000万円問題」が6年ほど前に話題になったように、個人にとって老後の関心事、というか心配事は、健康と並んでお金です。ある程度の生活水準を維持しようとすれば、公的年金だけで足りるはずもなく、足りない分は自助努力で資産形成をする必要があります。近年ではインフレの影響もあるので、老後2000万円では済まないかも知れません。この資産形成を支援する制度として設けられているのが、NISAやiDeCoなどの非課税投資制度です。

もうひとつの目的は、国内企業に成長資金を提供することです。ご存じの方も多いと思いますが、日本の個人金融資産の総額は2239兆円(6月末)ですが、このうち50.3%の1126兆円が現預金であり、株式は294兆円(13.1%)、投資信託は140兆円(6.3%)に過ぎません。これら投資商品による運用で得た収益に対する税金を軽減することによって、現預金から株式、あるいは投資信託への資金シフトを促し、企業の成長資金として供給すれば、経済が活性化される可能性が高まると言われています。

こうした2つの狙いのうち前者については、近年の株高の影響もあり、それなりに満足のいく成果が上がっているように見えます。が、問題は後者です。斎藤政調会長が言うように、NISAを通じて投資されている資金の多くが海外に流出しているとしたら、NISAのもうひとつの政策目的である「国内企業に成長資金を提供すること」が、ないがしろにされてしまいます。

日本証券業協会が公表している「NISA口座の開設・利用状況」によると、国内大手証券10社の数字でしかありませんが、10月末時点におけるNISA買付額のうち、国内株式は36%、投資信託が61%、残り3%が外国株式という数字が出ています。61%を占めている投資信託の全額が海外株式というわけではないと思われますが、一方で国内株式にはETFやREITの額も含まれているため、斎藤政調会長が言う「NISAの資金残高の約60~70%が海外資産で運用されている」のは、ほぼ正しい数字であると考えられます。