1億円を貯めるプロセスは幸せか?

まず考えてみたいのは「1億円まで資産を増やすプロセスとウェルビーイング」の関係です。

アメリカのFIRE本を読むと、生活費を極力抑え、年収の半分以上を投資に回せるようにしましょう、なんてアドバイスがあったりします。しかし、実際やってみると年収の25%以上を貯金すると日常生活はかなり節約を強いられます。なかなか大変です。

シンプルな生活が苦にならない、という人はいいのですが、ゲームは無料のスマホゲームのみ、ライブやフェスなどは参戦禁止、サブスクの動画配信のみ視聴で映画館はNG、服は最小限のワードローブを激安で買う、食事も味よりは安値を最優先、というようにいろいろなところで制限をかけていくことになります。

しかもそうした生活を15~20年以上は続ける覚悟が必要です。「未来のウェルビーイング」獲得のための手段であっても「現在のウェルビーイング」をけっこう長い時間、減らすことになってしまいます。

また、かなり高いリスクを取った資産運用を行うケースもあり、これも注意が必要です。中長期的な経済成長に見合う運用利回りでは、1億円が達成できない、とばかりに、リスクを高めた運用を行うと、リアルタイムトレードをしなければならず、またかなりのストレスが生じます。順調に増えているうちはいいのですが、大きな損失を被ると、大きなストレスがのしかかってきます。

「挑戦しなければ、結果も出ないのだ」と言ったらそれまでですが、期待リターンを年4%以上、特に年10%以上に設定した計画を10年連続で実現することはかなり難しいと考えておいてください。これは公的年金運用の期待リターンを2倍に高めるような成績を目標としている状態です。確かに、結果論として言えば高いリスクを取って大成功する人がいるのも事実ですが、高いリスクを取りすぎて失敗する人もたくさんいることを忘れてはいけません。