年を取るとなぜ、高額の出費でないと満足できなくなるのか

一方で、年を取るほど、昔より金額をかけないと満足度が高まらなくなります。これは一般的に見られる傾向です。

年を重ねるうちに、予算を多めに出せるようになるので、「高額の料理」「広くてぜいたくなホテルの宿泊経験」なども経験できるようになります。確かにハイグレードな感動を覚えますが、初めての経験や初めての感動は減っていきますので、「お金がかかった割にあまり幸福度は上がらなかった」ということもありえます。

一度高額出費をして満足を手に入れてしまうと、そこから「グレードダウンすると明らかに満足度が下がる」傾向が生まれるのも大人になってからの大問題です。

例えば一室が40~60㎡の広さのホテルに泊まった人が、20~30㎡の広さのホテルに泊まると、満足度よりもガッカリ感の方が高まってしまいます。「ハイシーズンだったから、これでも前の旅行より高いんだよね……」とか愚痴を言ってしまうこともあります。

大人は大人で、たくさん人生の経験を積んできたがゆえの弱みがあるわけです。冒頭の例えでいえば、10万円かけた旅行であっても、10歳代の5000円の1日にかなわないことがあるのです。

とはいえ、中高齢になったら必ず感動がない、というわけでもありません。今までやったことがないことをトライしてみる、というのはウェルビーイング的にはとてもいいことです。

「お金がなかったあの頃も懐かしかったなあ……」と考えているくらいなら、「人生50年、一度もやったことがないので、ピアノを習ってみよう」とか「一度も行ったことがない場所に行ってみよう。関ヶ原に行って、石田三成の本陣に立ってみたい!」のように、自分の中に眠る感動を引き起こすテーマを探してみてください。

まだ小さい子どもがいる家族なら、「子どもの経験や感動」を意識すると、親もまた感動が得られます。あなたにはありふれた経験も、初体験をして目をキラキラさせた子どもの姿が、新しい感動や記憶をもたらすからです。

誰でも、きっと強く幸福感を得る「何か」があるはずです。ウェルビーイングをたくさん手に入れるお金の使い方のコツは、金額だけではないのです。

自分が幸せになる「お金のウェルビーイング」と出費を意識してみよう

日々の生活で出費を抑えることは節約として大事なことです。残ったお金は未来の出費に回すことができ、未来の不安を消してくれます。しかし、目の前で得られる経験や感動をすべて否定し後回しにするべきではありません。

今回は、5000円の予算と10万円の予算の違いがあっても、個人の幸福度を左右するのは金額ではない、という話をしてみました。

「幸福の話は金額で決まるものではない」とまとめてしまえば結論は簡単ですが、改めてウェルビーイングが個人的な部分、経験や感動に依存する部分が大きいことが分かります。

だとすれば、「自分が幸せになるかどうか」を意識してお金の使い方を考えてみてはどうでしょうか。

あなたにとって、本当に価値のあるお金の使い方、それは何か考えるヒントにしてみてください。