各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、足利銀行のデータをもとに解説。
足利銀行の投信売れ筋ランキング(販売件数)の2025年8月のトップは前月と同じ「のむラップ・ファンド(積極型)」だったが、第2位には前月第5位だった「ゴールド・ファンド(為替ヘッジなし)」がジャンプアップした。前月第2位だった「のむラップ・ファンド(普通型)」は第3位に、第3位だった「フィデリティ・米国株式ファンドBコース(資産成長型・為替ヘッジなし)」は第4位にそれぞれ後退した。また、第6位に前月は第8位だった「キャピタル世界株式ファンド」が上がった。一方、6月にトップ10入りしていた「米国株式配当貴族(年4回決算型)」や「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド(毎月決算型)B(為替ヘッジなし)」は7月にトップ10圏外に落ちて8月にもトップ10に戻ってこなかった。
グローバル株式ファンドを超える「ゴールド」
足利銀行の売れ筋トップ10にはトップにあるバランスファンドの「のむラップ・ファンド(積極型)」を除けば、「フィデリティ・米国株式ファンド」、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」、「キャピタル世界株式ファンド」など、投信業界を代表する外国株式アクティブファンドがランクインしている。これらファンドは他の金融機関でも人気のあるファンド群といえる。ただ、それぞれのファンドは、個々の投資方針、また、投資対象の違いによって当然ながらパフォーマンスに違いがある。2024年1月以来のパフォーマンスだけをみても、三者三様の動きになっているため、漫然と「外国株式に投資するファンドであればよい」という考えではなく、運用の中身に関心を持ってそれぞれのファンドについて理解するように努めたい。
「フィデリティ・米国株式ファンド」は米国市場に上場している企業の中から、高成長かつ経営内容の優れた企業に選別投資している。2025年8月末時点の組み入れ上位銘柄は、「エヌビディア」を筆頭に「メタ・プラットフォームズ」、「アマゾン」、「バークシャー・ハサウェイ」、「ブロードコム」、「ネットフリックス」などとなっており、テクノロジー企業が中心だ。業種別でも「情報技術」が25.7%、「コミュニケーション・サービス」が20.1%で、この2業種で約半分を占めている。これら業種の銘柄は四半期ごとの決算発表の内容によって株価が大きく動く傾向がある。すなわち株価のバリュエーションは割高な水準にあるものが多く、決算内容が予想に届かなかった場合に大きく株価が下落してしまっている。ファンドの基準価額の変動が大きくなりがちな理由の1つだ。
「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」は同じように米国企業を投資対象にしているが、「長期にわたって安定成長できる卓越したビジネス」に着目している。8月末時点の組み入れ上位銘柄は、トップは「エヌビディア」だが、以下は「マイクロソフト」、「アマゾン」、「メタ・プラットフォームズ」、「ブロードコム」、「アルファベット」などとなっている。業種別には「情報技術」が37.1%、「コミュニケーション・サービス」が15.1%、「一般消費財・サービス」が13.2%であり、「フィデリティ・米国株式ファンド」よりハイテク株の比重は高い。ただ、「フィデリティ・米国株式ファンド」のトップ10には入っていない「アルファベット」を上位に組み入れ、「マイクロソフト」の組み入れ順位も高い。また、ヘルスケアの「ストライカー」を第10位に組み入れている。このあたりの組み入れ銘柄の差が2025年になってからの基準価額の動きの違いになってきていると考えられる。
一方、「キャピタル世界株式ファンド」は新興国を含む世界の株式を投資対象にしている。8月末時点の地域別構成比は、「北米」が60%、「欧州」が28%、「日本」4%などとなっており、「新興国」は7%を割り当てている。組み入れ上位銘柄は「メタ・プラットフォームズ」をトップに、「マイクロソフト」、「ブロードコム」、「台湾セミコンダクター(TSMC)」、「テスラ」、「エヌビディア」などとなっている。米国株のみに投資しているファンドと比べると、価格変動率はやや緩やかだが、2025年4月以降の株高局面において「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」を上回る上昇率になっている。
これら株式ファンドは、長期の運用実績においてインデックスを上回る運用成績を残してきた実績があるが、それらをもしのぐ成績を出しているのが「ゴールド・ファンド(為替ヘッジなし)」だ。特に、2025年4月の株価下落の影響をほとんど受けずに右肩上がりの上昇を続けたために株式ファンドを引き離す運用成績になっている。9月に入っても米国の利下げを受けてNY金先物価格などは史上最高値を更新する上昇となっており、引き続きゴールド人気は衰えそうにない。