各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、静銀ティーエム証券のデータをもとに解説。

静銀ティーエム証券の投信売れ筋(販売額)ランキングの2025年7月のトップは「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」、第2位は「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(年1回決算型)」だった。第3位に「ピクテ・ゴールデン・リスクプレミアム・ファンド(愛称:ポラリス)」が入り、前月第4位だった「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」は第5位に後退した。

一方、「ダイワ好配当日本株投信(愛称:季節点描)」が第4位にジャンプアップし、「東京海上・世界モノポリー戦略株式ファンド(年1回決算型)」が第7位に上昇、トップ10圏外から「サイバーセキュリティ株式オープン(為替ヘッジなし)」が第10位にランクインするなどテーマ型株式ファンドが売れ筋ランクを上げている。

人気のある3ファンドのパフォーマンスの違い

静銀ティーエム証券は、静岡銀行を核とする「しずおかフィナンシャルグループ」の証券会社だ。売れ筋トップ10に常連で入ってくる「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>」、「ピクテ・ゴールデン・リスクプレミアム・ファンド(愛称:ポラリス)」、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」は、他の販売会社でも人気のファンドで純資産残高が急速に拡大している。ただ、各ファンドの基準価額(分配金込み)の推移を振り返ると、三者三様で値動きに特徴があることがわかる。

2024年1月以来のパフォーマンスで「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」は2025年2月までは人気3ファンドの中で最も優れた成績を残してきたファンドだった。2025年3月以降に米国の株価の上昇力が衰え、4月に急落した後は、目立って優れた成績を残しているわけではない。2月までの好成績と比較すると4月以降の運用成績には物足りなさが感じられるだろう。問題は、4月の急落以降に従来の米国株が世界の株式市場を先導するような展開が継続するかだろう。8月に日本の日経平均株価が史上最高値をつけて、英国、ドイツなどの欧州に加えて日本も最高値圏に到達した。もはや米国だけが最高値圏をキープしているという状況ではなくなっている。それでもAI(人工知能)やWeb上の各種サービスで米国企業が世界のリーディングカンパニーである状況には変わりはないのだが、はたして市場の動きはどうなっていくのか? 

売れ筋でトップにある「インベスコ 世界厳選株式オープン」は2024年のパフォーマンスこそ「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」に及ばなかったものの、2025年になってからのパフォーマンスは4月以降に「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」をやや上回るような成績になった。米国だけではなく、先進国の企業も幅広く投資対象としている同ファンドの特徴が、現在の相場の流れにフィットしているためと考えられる。今後の展開において「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」と「インベスコ 世界厳選株式オープン」とどちらに優位な相場展開になっていくのか、今後の動きを注意深く観察していきたい。

一方、「ピクテ・ゴールデン・リスクプレミアム・ファンド(愛称:ポラリス)」は分散投資をするバランス型ファンドであるため、株式100%のファンドと比較すると年間のリターンではパフォーマンスでやや見劣りするが、グローバル株式に分散投資する「インベスコ 世界厳選株式オープン」とは、ほぼ同等のリターンを稼いできた。特に2025年4月の株価急落時には、同ファンドの値保ちの良さが際立っており、バランス型の特徴が発揮された局面になった。景気後退等による株価下落のリスクを意識する投資家には、有力な選択肢の1つになりそうだ。