各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、三井住友銀行のデータをもとに解説。

三井住友銀行の投信売れ筋ランキングの2025年7月のトップ4は前月と同じだった。トップが「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)<世界のベスト>」で、以下、「SMBC円資産ファンド」、「SMBC・DCインデックスファンド(S&P500)」、「三井住友・225オープン」が続いた。第5位に前月は第6位だった「三井住友・DCつみたてNISA・全海外株インデックスファンド」が上がり、「三井住友・NYダウ・ジョーンズ指数オープン(為替ヘッジなし)」が第6位に後退した。また、第10位にトップ10圏外から「ライフ・ジャーニー(かしこく育てるコース)<最高の人生の描き方>」がランクインした。

 

売れ筋トップ5で群を抜く「世界のベスト」

三井住友銀行の売れ筋ランキングのトップにある「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)<世界のベスト>」は、2025年のパフォーマンスでは主要インデックスファンドを上回る成績を残している。2025年7月末時点で基準価額(分配金込み)の年初来の上昇率は7.04%で、米国株式(S&P500)インデックスファンドの1.19%、全世界株式インデックスファンドの4.43%、また、国内株式(日経225)インデックスファンドの3.69%をいずれも大きく上回っている。

2025年の主要株式インデックスの動きは、4月に米国の「相互関税」の発表によって米国株式が大きく崩れ、それに影響されて国内株式や全世界株式も大きく下落したものの、当初発表された関税率よりも低い税率で主要国と米国が合意するようになると、4月に下落した各国の株価が下落前の水準に戻り始めた。その中で、世界経済を混乱させた震源地にあった米国株式の下落率が大きかっただけに、その後の戻りに時間がかかっているかのような動きだ。この世界の株価の動きに対して、アクティブファンドである「世界のベスト」は、えりすぐりの銘柄のみを厳選して投資しているがために、下落時の下落率を軽微に切り抜けることができた。それが7月末までの基準価額の推移に表れている。

一方、ランキング第2位の「SMBC円資産ファンド」は、国内資産(円資産)を対象としたバランス型ファンドで、基本的な配分比率は国内債券に50%、絶対収益型に30%、国内株式に20%となっている。海外株式ファンドとはリスク特性が大きく異なり、それによって値動きもまるで違っている。同ファンドの年初からの上昇率は7月末時点で0.98%だ。7月末時点で過去1年間の騰落率もプラス1.76%に過ぎない。リターンも小さいが価格の下落率も小さいのが最大の特徴といえる。株式ファンドが比較的大きな価格の上下動を繰り返していることに対し「SMBC円資産ファンド」はほとんど価格変動をせずに緩やかに右肩上がりの推移を続けるという傾向にある。このようなファンドは、「いつ必要になるのかわからない資金」を投資する対象といえる。

本来であれば投資信託を購入する資金は中長期に使わないことを前提とした資金が望ましいが、「すぐには使わない」というだけの資金も投資信託に投資する場合、株式ファンドのように大きな価格変動のあるファンドは解約(売却)のタイミングで思わぬ損失をかぶる可能性がある。「SMBC円資産ファンド」のように価格変動率が小さいファンドの場合は、売却のタイミングを気にする必要がない。年率0.913%(税込み)の信託報酬のみ(購入時手数料なし)を意識すればよいが、1年以上保有していれば信託報酬分以上のリターンは獲得できた計算だ。それぞれのファンドの特性に応じた使い方を考えれば「SMBC円資産ファンド」のような期待リターンの水準が低いファンドにも十分な活用メリットがあることがわかる。