注目イベント
来週は経済指標は一旦小休止となりますが、8日火曜日の日本時間13時30分にオーストラリアの中央銀行が金融政策を発表します。0.25%の利下げが現時点で96%織り込まれています。織り込み済みの利下げによってオーストラリアドルが下落するのかどうか、注目です。織り込みが進んだ後の利下げはあまり通貨安には効かないと考えられ、オーストラリアドルもそれほど下がらないと思われます。
相互関税の交渉期限が来週9日です。この9日を前に交渉が進展していないことで、トランプ大統領が最大70%の関税をかけると話していますので、関税を巡る動きが出てくる可能性があります。一方で、ベッセント財務長官は9月1日まで交渉期限を延ばすことも言っており、日本に対しては参議院選挙があって期間中の合意はほぼ難しいというニュアンスのことも言っています。9月1日まで延長されれば、マーケットの緊張が和らぐ方向に作用すると思われます。
また、10日と11日の日本時間午前2時に米国の10年国債と30年国債の入札があります。今週米国でトランプ減税の恒久化など、今後3兆ドル以上も債務残高が拡大する法案が通ったことを踏まえ、改めて米国債に対する需要が注目されます。
6月分のFOMC議事録では、どのぐらい利下げの可能性や必要性が議論されていたのかがマーケットを動かす可能性があり、こちらも注目です。
このほか、11日から金曜日に日付が変わった午前3時にウォラー理事の講演があります。ウォラー理事は7月利下げを容認するニュアンスの発言をしています。前トランプ政権時に指名された人だけに、次期FRB議長を狙ってトランプ大統領に忖度して7月利下げを示唆するような発言が出る可能性もあります。
来週のシナリオ
米国の10年、30年国債入札が注目です。仮にこの入札が不調だった場合は、大型減税や財政拡張による悪い金利上昇が意識されて、ドルと金利が逆相関に逆戻りし、金利は上がるけれどもドルは売られる展開になります。この場合、ドル円相場も143円や場合によっては142円台の可能性が出てきます。ただ、ドル安ではあっても、円も冴えない状況だとすれば、他通貨が強いことになり、クロス円は堅調に推移します。
一方で入札が好調だった場合は、米ドルと金利の順相関の関係が一層強まり、米ドルが水準的に持ち直す可能性があります。その場合、145円台の回復やその定着を伺う展開になってもおかしくありません。
この収録の段階では、法案が議会を通過した後、米国の先物の株式相場は若干下げて反応していますので、マーケットが100%ポジティブな反応を示しているわけではないようです。ただし、労働市場の悪化が見込まれる中、目先の景気については追い風になる部分もあり、その点がポジティブに評価され、かつ国債入札においてある程度の需要が確認されれば、少しドルポジティブな流れになると予想しています。
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