投機筋のポジション
ところで、ドル安の中でも円高がなかなか進まない理由の1つに、投機筋の円ロングが依然として高水準だということが挙げられます。ドルを売りたい場合でも、その見合いとして買う通貨を選ぶ際、円についてはマーケット参加者の間で相当円買いが積み上がっており、円があまり選ばれない状況です。
ボラティリティの低下
また、ボラティリティの低下も円高を阻んでいます。ボラティリティが上がる時はリスク回避局面で、そうした場面ではリスク回避の円買いが進みやすいです。一方でボラティリティが低下すると、相場はそれほど大きく動かないとの見方から、低金利通貨である円が最も売られやすくなります。
その点、ドル円、ユーロ円、メキシコペソ円のボラティリティを見ると、ユーロ円、メキシコペソ円ともに約1年ぶりの水準まで下がっており、ドル円のボラティリティも相互関税が4月2日に公表される直前の水準を下回ってきました。この低ボラティリティも円高に対するブレーキになっている可能性があります。
クロス円の堅調
年初を100とした各通貨の推移を見ると、スウェーデンクローナ円が少し頭打ちになってきているものの、スイス円とユーロ円は依然として堅調です。ユーロ円は今週170円を超え、スイス円も181円台と高値更新しています。ポンド円はトリプル安の状況もあって年初と同じぐらいの水準で推移していますが、カナダドル円は米国との交渉再開というニュースを手掛かりに約5ヶ月ぶりの水準まで上がってきています。
ドル円が年初と比べて8%下がっているのはドル安によるものです。実際、幅広い通貨に対する円の動きをみると、円高というよりも寧ろ円安となっており、円が強いわけではないことがわかります。