金利差と為替の関係性の変化
ユーロドルの水準も確認します。図は縦軸がユーロドル相場、横軸が過去1年間のドイツと米国の実質長期金利差です。このデータを見ると、去年6月から(相互関税が発表される)今年3月までは、金利差とユーロドルは順相関の関係でした。しかし、相互関税が発表された4月以降は、回帰線が水平となっており、金利差に関係なくユーロが上がっている状況です。ユーロ圏の財政拡張という大きなテーマに反応し、金利差を度外視したユーロ高が続いており、このテーマが後退した瞬間にユーロドルが反落する調整が入る可能性があります。

米ドルと金利の関係も変化しています。相互関税が発表される3月までは順相関でしたが、4月以降5月までは米国の金利が上がるとドル安が進む逆相関となりました。6月以降は米国のトリプル安に歯止めがかかり、金利とドルの関係が順相関に戻りましたが、水準的には以前よりも大きくドル安方向に下がっています。これはトランプリスクによるものと考えられ、関税などいつどんな政策を出してくるか分からないことで米ドルが下がり、そのままの水準で金利との順相関が戻った状態です。

著者情報
内田稔
うちだみのり
高千穂大学 教授/FDAlco 外国為替アナリスト
1993年慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、東京銀行(現、三菱UFJ銀行)入行。マーケット業務を歴任し、2007年より外国為替のリサーチを担当。2011年4月からチーフアナリストとしてハウスビューの策定を統括。J-Money誌(旧ユーロマネー誌日本語版)の東京外国為替市場調査では、2013年より9年連続アナリスト個人ランキング部門第1位。2022年4月より高千穂大学に転じ、国際金融論や専門ゼミを担当。また、株式会社FDAlcoの為替アナリストとして為替市場の調査や分析といった実務を継続する傍らロイターコラム「外国為替フォーラム」、テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」、News Picks等でも情報発信中。そのほか公益財団法人国際通貨研究所客員研究員、証券アナリストジャーナル編集委員会委員も兼任。日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカルアナリスト協会認定アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本金融学会会員、日本ファイナンス学会会員、経済学修士(京都産業大学)
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