別居している場合は「生計同一関係に関する申立書」が必要
ここで配偶者加給年金の生計維持という条件については、①生計同一であること、②加算対象となる配偶者の前年(あるいは前々年)の年収が850万円未満であることあるいは655.5万円未満であること、いずれも満たすこととなっています。祥子さんはパート勤務で収入も少ないため、②の年収要件は満たしています。一方、①については、住民票上同じ住所であればそのまま生計同一と認められますが、別住所であっても、対象となる配偶者への経済的援助と音信・訪問があれば認められることになっています。
泰孝さんによると「定期的に妻には送金しているし、音信もあるし、家族のもとには年何回も帰っている」とのこと。そのため、たとえ別住所でも生計同一と認められそうで、これを聞き泰孝さんは安心します。
別居している場合は、年金の手続きに際し、そうした経緯について申し立てをする「生計同一関係に関する申立書」が必要となります。「生計同一関係に関する申立書」で泰孝さんから祥子さんへの経済的援助と音信・訪問の状況にできる限り具体的に記入して提出することになります。また、その申立書の申立て内容についての第3者による証明なども必要になります。
生計維持があれば手続きが少し煩雑でも加算
こうして泰孝さんは、65歳になったら老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給ができるようになり、加給年金の加算もこのままされるようになりそうです。これで家計的にも助かりそうだったため、安心します。
以上のように、たとえ住所が別でも生計維持が認められれば加給年金も対象になります。手続きは同居している場合よりも煩雑になるかもしれませんが、対象となる人には加算がされますので、必要な手続きは忘れずに行っておくことが大切です。
なお、年間41万5900円(2025年度の額)加算される配偶者加給年金は、改正により2028年4月以降に新規に加算され始める人から現在より10%少ない額で加算されることになっています。泰孝さんのように、改正施行前に65歳になる場合は10%減にはなりませんが、改正後に加給年金を受け取る場合は、改正点も合わせて押さえておきたいところでしょう。
※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。