楽天証券の投信売れ筋ランキングの2025年3月のトップ3は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(通称:オルカン)、「楽天・プラス・S&P500インデックス・ファンド」となり、2024年11月以来5カ月連続でトップ3は変わらなかった。第4位には「楽天・全米株式インデックス・ファンド」が前月の第5位からランクアップ。第5位に「楽天・プラス・オールカントリー株式インデックス・ファンド」が浮上した。前月第4位の「楽天 日本株4.3倍ブル」は第6位にまで後退した。また、第9位にトップ10圏外から「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」がランクインした。
◆「M7」がけん引した「S&P500」「オルカン」の人気が続く
米トランプ大統領の関税政策によって「マグニフィセント・セブン(M7)」(アップル、メタ・プラットフォームズ、アマゾン、アルファベット、マイクロソフト、エヌビディア、テスラ)の株価が大きく下落している。トランプ政権誕生の期待感で株価(NASDAQ総合)が最高値を付けた2024年12月16日を100とすると、「S&P500」の安値は3月13日の90.90で高値から10%程度の下落になっている。「NASDAQ総合」の安値は85.77で高値から15%程度の下落。これに対して「M7平均株価(単純平均)」は3月18日に79.64まで20%強の下落になっている。
2025年になってからの米国の株価下落は「M7」が主導しているといってよい。株価下落のきっかけになっているのは、トランプ大統領が打ち出す「関税」だ。トランプ大統領は「米国は他国の関税で搾取され続けてきた」ということであり、4月2日「解放の日」に打ち出したすべての国に一律10%の関税、そして、中国に34%、EUに20%、台湾に32%、日本に24%、インドに26%、韓国に25%を課すという関税は「相互関税」という理解らしい。「M7」はグローバルにビジネスを展開する企業であるため、関税の報復対象になりやすい。象徴的なのは、トランプ政権で重要なポジションを与えられているイーロン・マスク氏が率いている「テスラ」だ。欧州などでテスラ車の不買運動なども行われ、「テスラ」の株価は、2024年12月17日に479.86ドルの高値から、2025年3月10日には222.15ドルに落ち込んだ。下落率は53.70%で半値以下になってしまった。
そして、2023年、2024年の株高局面では「S&P500」も「全世界株式(オール・カントリー)」も「M7」の株高に支えられて大きな上昇を勝ち得てきた。2025年になってからは、2024年12月までとは逆の現象が起こっている。2024年末には「S&P500」の時価総額に占める「M7」の割合が30%を超えていた。過度な集中が起こっていたのだが、「M7」の株価が堅調だったがゆえに、株価指数としての「S&P500」も「全世界株式(オール・カントリー)」も高値を更新する好調な価格推移になった。
これが逆転して「M7」が下落を主導するようになると、「S&P500」も「全世界株式(オール・カントリー)」も相当厳しい局面を迎えるのではないのだろうか。株式市場の様相が昨年末と今年とでは大きく変わってきているにもかかわらず、売れ筋ランキングのトップ3に変化がないというのは奇異な印象がある。長期投資にはトランプ政権の4年などあっという間の「ノイズ」に過ぎないという強い意志があるのだろうか。