義妹は借金を繰り返していた

侑里は両親と伊織たちの他にも友人や消費者金融など、多重の借金を抱えていた。もちろん借りた金の使い道はビジネスでも結婚詐欺に遭った友人のためでもなく、ブランド品を買い、高級レストランで食事をし、贅沢を尽くすこと。

伊織はもはや呆れすぎて掛ける言葉のひとつすら見つけられなかったし、侑里が一体どうしてそんな生活をする羽目になったのかは、縁を切った今とはってはもう分からない。いや、知りたくもない、のほうが正しいだろうか。

「加奈子。明日、模試でしょ? ちゃんと勉強してるの?」

「してる、してる」

部活から帰ってきて食事をしている加奈子に話かけた。してるしてるとはいうものの、部活で疲れ切って帰ってきてはよく寝落ちしている娘が受験の準備をしているとは思えない。

「伊織、あんまり言うとプレッシャーになるから」

ソファで本を読んでいた佑次が顔を上げる。

「そんなこと言ったって、模試だってただじゃないんだから、頑張ってもらわないと」

「まあ、模試も受験も大事だけど、誠実に生きてくれるのが1番だよ」

「なんかお父さんが言うと重みが違うね」

「茶化さないの」

誰からともなく笑いが漏れる。佑次は再び読んでいた本に視線を落とす。ちらりと見える表紙には「老後を見据えた資産運用」との文字が見える。

ブランド品を売ることで作ったお金はとうてい50万には届かず、侑里に貸したお金はほとんど返ってこなかった。

決して安くない勉強代だったが、これまでお金にあまり頓着のなかった佑次が真面目にこれからの家族とお金のことを考えるようになったのは辛うじて怪我の功名だったと言えるのかもしれない。

もちろん、まだまだなのだが、これから先もつづく家族の時間は長い。だから伊織はこれからの佑次に期待しておこうと思う。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。