返ってこなかったら、何とかする

伊織は苛つきを抑えながら、佑次に質問をする。

「分かった。そういう話だったわよね。じゃあそのビジネスっていうのはなんなのか教えてよ。聞いたんでしょ?」

「いや、色々言ってたけど、俺にはよく分からなかったよ。あんまり俺自身がそういうのに無頓着だからさ。でもお金が必要なら貸してあげたいと思ったんだ。やっぱり俺にとっては大事な家族だからさ……」

佑次が悪いわけではない。だが佑次の優しさが仇になっていると、伊織は思った。佑次のやったことは、悪いことではないにしても、正しいこととは思えない。

「私だってさ、ケチで意地悪してやろうって思って言ってるんじゃないの。加奈子の進学とかローンとか老後とか、私たち3人のためのお金だって分かってるよね?」

佑次もようやく自分のしたことの重大さに気づいたのだろう。うつむいて唇を噛んでいる。

「……ごめん。……もし返ってこなかったら俺がなんとかするから」

「せめて貸す前に相談くらいしてほしかった。私は悲しいよ」

失ったものは50万円だけではない。言外にそう告げる伊織の言葉に、佑次はがっくりと項垂れた。