<前編のあらすじ>

伊織は夫の佑次、そして娘の加奈子と仲睦まじく暮らしている。唯一の心のわだかまりが、職業不詳の義妹・侑里である。

ろくに働いている素振りもないが、なぜかいつもブランドもので着飾っている侑里を伊織はいつもいぶかしんでいた。

ある日侑里が家族のもとにやって来る。聞けば新たなビジネスを起こすため、現金50万が必要なのだという。

「どうせ金の無心に来ただけ」

そう思い、伊織は佑次に借金の申し出を断るよう告げ、佑次も納得しているように思えたのだが……。

お金を下ろそうと家族口座を確認すると、まとまった額のお金がなくなっていた。もちろん侑里には思い当たる節があった。

前編:「もっとクリエイティブな人生を送りたいの」職業不詳の義妹が家に訪ねてきて夫にお金をせびったワケ

夫を問いただすも

「これ、どういうこと? 口座から勝手に50万円が抜かれているんだけど」

伊織は佑次に通帳を突きつけた。佑次は食卓に座り、縮こまっている。とはいえ驚いた様子はなく、いずれこうなることは予想していたようにも見える。幸い加奈子は塾に行っていて不在なので、徹底的に話ができる。

「あのあと、また侑里から連絡が来てさ……どうにかならないかって言われて」
「私、侑里さんにはお金は貸さないって言ったよね? 佑次だって納得したはずでしょ? どうしてこんなことをするのよ?」

「いや、別に俺は納得したわけじゃないよ……。伊織が勝手に話を終わらせちゃったからさ」

「だから無断で50万も渡したってこと? なら、私の意見は無視して貸したんだ」

伊織は容赦なく佑次を問い詰める。佑次は慌てて首を横に振る。

「もうちょっと話を聞いてあげてもいいんじゃないかって思ったんだよ。頭ごなしに拒否するのは可哀想じゃん。向こうだって色々と考えて、俺たちに頭を下げてるんだからさ」

「話を聞くのは別にいいよ。でも聞くだけじゃないよね? お金渡しちゃってるじゃん!」

「勝手に貸したのはごめん。……でも、やっぱりさ、離婚してから1人で心細いみたいなんだよ。俺たちみたいに子供がいるわけじゃないし、自分でお金を稼いでいかないといけないって思ったみたいで」