もっと頻繁に父親と関わっていれば…
結局、一健さんは数年かけて分割で500万円を受け取ることになった。今回のケースでは、一健さんは親の遺産1000万円のうち、実際に相続できたのは遺留分としての500万円だけだった。
相続人が自分1人であれば財産はすべて自分のものと思うかもしれない。しかし、遺言書によって、法定相続人であっても財産を全額受け取れず、遺留分のみの相続にとどまるということもある。
遺留分を主張すれば、最低限の権利は確保できるかもしれない。ただし、それを受け取るには分割であったり、相続財産でなく金銭で受け取らなければならないこともある。
このように遺産相続は、単なる法律の問題だけでなく、生前の関係性が大きく影響する。今回の件も一健さんがもっと頻繁に父親と関わっていれば、遺言書の内容も違っていたかもしれない。
「親の財産は当然自分のもの、そう思い込んでいました」と一健さんは私に語る。
一健さんの話は決して他人事ではないし嘘でもない。現実に起きている事例である。親の遺産は自分のものだとあぐらをかいていると、ある日突然その遺産をぽっと出の他人に奪われてしまうかもしれない。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。