有形固定資産が少ない「ファブライト経営」

一方、有形固定資産の金額は2,660億円と少なくなっています。これは、ルネサスが自社工場での生産をできるだけ抑えて、ファウンドリへの製造委託を活用する「ファブライト経営」を進めてきたことによります。

ただし、近年は設備投資を積極化しており、有形固定資産の金額は増加傾向にあります。

B/Sの右側には、流動負債が8,290億円、非流動負債が3,330億円計上されています。これらの負債には、有利子負債(社債及び借入金)が合計で6,510億円含まれています。これは、大型買収を行なうにあたって必要な資金を、有利子負債によって調達してきたためです。なお、資本は2兆60億円で、自己資本比率は63%となっています。

以上のように、ルネサスのB/Sには、積極的なM&Aとそれに伴う資金調達、そしてファブライト経営といった戦略上の特徴がよく表れているといえるでしょう。

ここが比較するポイント!

ここまで半導体業界3社を比較してきました。TSMC、エヌビディア、ルネサスの間にはB/Sにおける資産の持ち方に大きな違いが見られました。

具体的には、ファウンドリであるTSMCでは有形固定資産が、ファブレス型のビジネスモデルを採用するエヌビディアでは流動資産が、ファブライトで大型M&Aによる成長を志向するルネサスでは無形固定資産が大きくなるという特徴があります。

B/Sに戦略上の特徴の違いが現れる事例だったといえるでしょう。
 

会計指標の比較図鑑

 

著者名 矢部 謙介

発行元    日本実業出版社

価格 1,980円(税込)