三菱UFJ銀行のウェルスナビ買収にはどんな狙いがあるのか?

ただ、最近の動きとして注目されるのは、大手金融機関が独立系のロボアド会社を、自社の傘下に組み込む動きが活発化していることです。

業界最大手のウェルスナビは当初、SBI証券との業務提携で顧客拡大を行ってきましたが、SBIグループは2021年8月からFOLIOを傘下に入れており、ウェルスナビに送客するのは合理的ではないという経営判断から、2022年11月に業務提携を解消しました。

この業務提携解消によって、一時は口座数の減少が懸念されるといった報道もありましたが、新NISAに対応した「おまかせNISA」もリリースし、利用者は順調に拡大。預かり資産は1.3兆円(2024年7月時点)、利用者も41万人(2024年9月時点)に達しています。そしてこの1月には、三菱UFJ銀行によるTOBを受け入れ、その傘下に入ることになりました。

ちなみにロボアド業界2位である「THEO」(お金のデザイン)の預かり資産が2200億円超、利用者が13万人(ともに2024年1月時点)ですから、ウェルスナビは、ロボアドの分野で圧倒的な優位性を築いています。

そうであるにもかかわらず、なぜ大手金融機関の傘下に入ったのでしょうか。

ウェルスナビとしては経営の安定を図りたいという意図があったように思えます。同社の2023年12月期決算を見ると、営業収益が81億6792万円。これに対する営業利益は5億2367万円で、営業利益率は6.41%です。

単純な比較はできませんが、一任型であることを考えると、投資信託などを設定・運用している運用会社が比較対象になるでしょう。業界最大手である野村アセットマネジメントの損益計算書を見ると、2024年3月期の営業利益率は22.05%、独立系であるコモンズ投信のそれが15.06%です。また、ほぼ同じ運用資産額を持つレオス・キャピタルワークスの営業利益率が、18.57%です。

このように比較すると、投資信託とロボアドの違いこそありますが、利用者のお金を運用する場としての収益性から見て、ウェルスナビのそれはいささか低く、そこを補強する狙いが、三菱UFJ銀行によるTOBの受け入れにあると推察します。

一方、三菱UFJフィナンシャルグループにとって、ウェルスナビを傘下に入れるメリットは何でしょうか。

それは恐らく省人化でしょう。ウェルスナビが三菱UFJ銀行と業務資本提携を結んだ2024年3月時点の、ウェルスナビ柴山CEOのコメントによると、「これからのウェルスナビは、資産運用だけでなく、保険や年金、住宅ローンまで、お金の悩みを総合的に解決するサービスの実現を目指します」とあります。

それに先立ち、三菱UFJ銀行は2023年度中に店舗を4割削減したうえで、2025年度までには窓口業務の7割をデジタル化する方針を打ち出していました。これまで人を介して行われてきた窓口相談業務にウェルスナビの機能を組み込んで、省人化を進めるというストーリーが見えてきます。