実質金利とは何か? 名目金利との違いと円安の関係

今回の利上げ見送りで円安になるんだ、これはいろいろ説明できると思うのですが、基本的に私の考えている円安の一番のドライバーは実質金利の低下です。利上げ見送りがなぜ円安を招くのか、それはインフレと実質金利の低下を招くからです。

出所:内田氏
 

中段に書いていますが、マーケットとか実体経済にとって重要なのは、名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利です。日銀が利上げを見送るとどうなるかというと、このインフレが今後もどんどん上がっていく可能性を市場は意識してしまうのです。インフレ率というこの2つ目の数字が大きくなると、引き算をした結果の答えである実質金利は低く下がっていく、この実質金利が下がるという動きに円安が連動するということです。この実質金利というのが、名目金利からインフレ率を差し引くという、少し分かりにくいところもあると思うので、簡単な例で実質金利の考え方を説明します。

例えば、今日本の銀行預金の金利が1年間で5%で、物価は10%上がるという状況を想定してみてください。今、手元に持っている100万円で100万円の自動車が買えるわけですが、これを自動車を買わずに1年間銀行にお金を預けると何が起こるかというと、銀行預金が5%利息がつきますので、税金を一旦無視すると約5万円になります。

出所:内田氏
 

一方で、100万円だった自動車は10%インフレが進むわけですから、1年後には110万円に値上がりしているという状態です。ですので、もし車を引き続き買いたいとすると、5万円追加でお金を出さないと、もう車を買うことができなくなっています。これは銀行にお金を預けたことによって実質的に5万円損したのと同じだということです。この5万円の損したということを式で表しているのは、名目の金利というのがこの銀行預金金利の5%で、インフレ率の10%を差し引いたマイナス5%が実質的な金利だということです。

今、日本も実質金利がどんな水準かというと、まず実質政策金利、政策金利は今日本は0.25%です。2.3%というのは前月分のデータですが、日本のインフレ率コアと言われるものが10月分は2.3%でしたので、差し引きすると-2.05%です。それから同じように実質長期金利を考えてみますと、今だいたい長期金利は1.05%、そこから2.3を引くと-1.25%になります。この-2.05%が他の国と比べるとどういう位置づけにあるのか、右側のグラフですが、大幅なマイナス点、かつどの通貨よりも低いのがこの日本の実質政策金利という状態で、これが円安を招いているのです。

出所:内田氏