証券会社の破綻は1997年に集中しました。山一證券を筆頭に、三洋証券や小川証券、越後証券や丸荘証券が破綻しています。またリーマン・ショックが起きた2008年には、リーマン・ブラザーズの日本法人であるリーマン・ブラザーズ証券が破綻しています。
証券会社が倒産したとき、私たちのお金はどうなるのでしょうか。
結論からいうと、証券会社が破綻しても私たちの資産は守られます。証券会社が預かる顧客の資産は「分別管理制度」と「投資者保護基金制度」の二重の制度で保全されているためです。
今回は私たちのお金を守る2つの制度、分別管理制度と投資者保護基金制度について紹介します。また、証券会社の健全性を維持する「自己資本規制比率」もあわせて解説します。
分別管理制度…証券会社の債務から顧客の資産を守る仕組み
まずは分別管理制度の概要を紹介します。
分別管理制度とは、証券会社に自己の資産と顧客の資産を分けて保管するよう義務付けるものです。顧客の資産と証券会社の資産を混同しないよう、厳格に分離して管理する仕組みです。分別管理には証券保管振替機構(ほふり、株式などの保管や受け渡しを担う機関)や信託銀行などが活用されています。
分別管理のポイントは、私たちの資産が借金の返済に使われないということです。
通常、企業が経営破綻し清算となった場合、残った資産を債権者に分配し弁済とします。証券会社の場合、この分配資産に顧客の資産は含まれません。証券会社の債務は、あくまで証券会社が自身で保有する資産を使って弁済されます。これを実現するために分別管理が行われています。
分別管理が守られている限り、基本的に私たちの資産は証券会社の破綻の影響を受けません。分別管理が実施されているかどうか、公認会計士や監査法人から年1回以上チェックされています。これが私たちの資産を守る1つ目の制度です。
投資者保護基金制度…万が一のセーフティーネット
私たちの資産を守る2つ目の制度は、投資者保護基金制度です。証券会社が破綻した影響で、万が一私たちの資産が傷つけられたとき、その補償を行います。
先述のとおり、分別管理が行われているなら、たとえ預け先の証券会社が破綻しても私たちの資産は守られます。しかし、何らかの事情で証券会社が分別管理を怠り、その事実が定期的なチェックでも発見できないまま、その証券会社が破綻に至ったといったケースも想定されます。
このようなケースに該当するとき、制度の主体である日本投資者保護基金が損害を補償します。本来はその証券会社が返還すべきお金を、基金が肩代わりして補償する仕組みです。
ただし補償額は最大で1人1000万円です。1000万円を超える損害は、他の債権者と同様に破綻した証券会社へ請求することとなります。
私たちのお金を守る2つの制度のうち、より重要なものは分別管理制度です。上述のとおり投資者保護基金制度は補償に限界があります。しかし分別管理が守られているなら、1000万円以上を預けている場合も基本的に全額が返還されます。投資者保護基金制度は、最終的なセーフティーネットの役割を持つといえるでしょう。