地域偏重のリスクの存在

もう1つのリスクは、アメリカへの投資比率が約6割を占めていることである。現状、アメリカの景気指標は底堅さを示しており、景気悪化による株価の急落はあまり起こりそうもない。

他方、直近の大統領選の結果を受けての為替や株価の動きは予想できないが、大きく動くのはほぼ確実である。「オルカン」ではそうしたアメリカの政治経済の動きをヘッジできないことも注意しなければならない。

信託報酬の安さは投資家にとって良いことか?

よく「オルカン」の良さに1つに、「信託報酬の安さ」をあげる人がいる。確かに「オルカン」の信託報酬は0.05775%と非常に低コストで全世界の株式に投資できる魅力的な商品である。

一方、投資信託の魅力というのは、運用会社が世界に4万社あると言われる上場企業をリサーチし、個人投資家では調べ尽くせない優良な銘柄を顧客が投資できるようにすることではないのだろうか。

「オルカン」で投資される銘柄は世界でも名の通る大企業が多い。投資単価を下げるという意味では有用であるが、個別で投資をした方が配当を直接受け取れ、信託報酬もかからない。

我々は「オルカン」という存在を評価しすぎるあまり、別の選択肢を検討する機会を失っているのではないだろうか。

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「オルカン」は、確かに全世界の株式に分散投資できる手軽な商品であり、新NISAでも有力な選択肢の1つである。しかし、為替リスクや地域偏重リスクといった側面も存在することを忘れてはならない。

特に、現在の円高リスクは軽視できない。仮に円高に転じれば、オルカンの基準価額は大きく下落する可能性があり、新NISAで購入した投資家は含み損を抱える可能性もある。また、アメリカ大統領選挙を終えたいま、アメリカ経済の行方にも注意が必要だ。政治状況の変化によっては、アメリカ株式市場、ひいてはオルカンの基準価額が大きく変動する可能性もある。さらに、信託報酬の安さだけに注目して、安易にオルカンに投資するのも考えものだ。

特に学生などの若年層においては、長期的な資産運用が前提になることもあり、個別株投資や他の投資信託など、オルカン以外の選択肢も検討する価値はあるだろう。

執筆/学生投資連合USIC 根岸理央