いつか訪れるのに、ついつい話し合いを先延ばしにしまいがちな「相続」。相続問題に詳しい弁護士の古山隼也氏は「相続には予想外のトラブルがつきもの」といいます。相続をきっかけに家族がバラバラになる「争族」にならないためにも、今回は相続に関するよくある疑問を、Q&A形式で古山氏に解説してもらいます。(全4回の2回目)
●第1回:相続放棄しても「空き家」は管理しないとダメ? 民法改正による管理義務の変更ポイントをチェック
※本稿は、古山隼也著『弁護士だからわかる!できる! あんしん相続 手続きの「めんどくさい」「わからない」「ストレス」が消える!』(Gakken)の一部を抜粋・再編集したものです。
1人にすべての遺産を渡したい
Q. 遺言書に「長女にすべてを相続させる。次女には一切財産を相続させない」と書いたらダメですか?
A. 遺言書に書くのは自由です。
遺言の内容が一部の相続人の遺留分(相続人に認められた最低限の財産保障)を侵害していることは遺言の効力に影響を与えません。
そのため「特定の相続人に遺産全部を相続させる」という内容の遺言は有効です。
しかし、遺留分を侵害された相続人が、受贈者(贈与を受けた人)や受遺者(遺言によって財産を受け取った人)に対して、遺留分侵害額請求をする可能性はあります(民法1046条)。
そこで「最低限、遺留分に相当する財産を相続させる」という内容の遺言にするなど、相続人同士の間でトラブルが起こらないよう配慮するのが一般的です。