5年前の今頃…
今から5年前の2019年7月、京都市伏見区にあるアニメ制作会社「京都アニメーション」のスタジオが放火され、35人が死亡するという痛ましい事件が起こった。また、この月には多くの男性アイドルグループをプロデュースして一大アイドル事務所を経営していたジャニー喜多川氏が死去した(享年87歳)。
この頃、株式市場は米中貿易摩擦、日韓関係の悪化などを懸念し低調だった。米FRBは7月30日、31日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利(FFレート)の誘導レンジを2.25%~2.50%から2.00%~2.25%に引き下げることを決定した。2019年1月に0,25%金利を引き上げてから約半年で金融緩和への転換を行ったことになるが、FRBは、この7月の利下げについて「景気循環の途中の調整であり、長い利下げサイクルの始まりではない」と説明した。日本と欧州はマイナス金利政策を継続していた。
そんな5年前に「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」に投資したとしたら、今頃はいくらになっているだろうか?
「S&P500」とは?
「S&P500」という株価指数は、NY証券取引所やNASDAQグローバルなど米国主要市場に上場している主要産業を代表する時価総額が大きな500社で構成され、米国株式市場の時価総額の約80%をカバーしている。そのため、米国株式市場全体の動向を表す代表的な株価指数という位置づけになっている。「S&P500」に連動するインデックスファンドは、米国を代表する大企業500社に分散投資していることと同様の効果があり、外国株式、あるいは、米国株式に投資する際の第一歩として選ばれることが多い。
指数の算出開始は1957年3月で、直近のfactsheetによると、2024年8月末時点で過去10年間の年率換算トータルリターン(米ドル建て)は12.98%になっている。過去1年間の年率トータルリターンは27.14%であるため、直近では過去平均を大幅に上回る上昇率になっていることがわかる。
「S&P500」に連動するインデックスファンドは、国内で多く設定、運用されている。運用成績そのものは、基本的に「S&P500」(配当込み、円換算)に連動することをめざすため、大きな違いがないが8月末現在で為替ヘッジなしだけで32本ある(ETF含む)。主な違いは、販売手数料と信託報酬だ。最も純資産残高が大きな「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は、販売手数料が無料で、信託報酬率は年0.09%になっている。
過去5年間の年平均リターンは?
「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の基準価額は2024年7月末に2万9851円。5年間で基準価額は約2.7倍に値上がりした。年平均の値上がり率は22.02%だ。この間、2020年3月のコロナ・パンデミックで世界経済が瞬間的に凍り付いたようなショックを経験している。その時、2019年7月末に対して基準価額は23.59%安の水準に落ち込んだ。実際には、2020年2月に2019年7月末比16.55%高に値上がりしていた水準からの急落だったため、高値からの下落率は34.44%にもなった。わずか1カ月間で30%以上も資産が目減りしたことになる。
また、2022年にインフレ対策として米FRBが急速に政策金利を引き上げた時、同ファンドの基準価額は1年余りにわたって横ばいとなる。基準価額が上昇トレンドに復帰するのは2023年4月以降のことだ。2019年7月末1万1035円から、2020年3月24日に8432円でボトムを付けた後、2022年1月に1万9291円まで2年足らずに2.29倍に値上がりしていた。値上がりするのが当たり前の状態から、一転して横ばいになって、しかも、1年以上にわたってもみ合いが続いていた。このもみ合いをじっと耐えて保有し続けた人が、その後、2024年7月の高値に至る大きな上昇相場の恩恵を受けることができたことになる。
出所:投資信託協会のデータを元に編集部作成
2019年7月末~2024年8月末
インデックスファンドへの投資は、その時々の価格の変動に一喜一憂することなく、10年、20年という長期で投資を継続することを重視すべきだ。その間、株価の急落や、1年以上にわたる株価の低迷なども経験するかもしれないが、世界経済は景気変動の波をくぐり抜けて右肩上がりに成長を続けている。この世界経済の成長という流れが止まらない限りは、株価もまた、右肩上がりの動きを続けることになる。