住宅の購入およびローンの組み方は、資産形成のさなかにある人にとって老後資金計画に大きな影響を及ぼす重要なイベント。
それだけに、ちまたには住宅購入をめぐるたくさんの情報があふれていますが……人生100年時代を見据え、単に「住処」としてだけでなく、「資産」として活用していく視点や、平成から令和になって「常識」が変化している点も踏まえるべきだと、資産のミライ研究所 所長の丸岡知夫氏は指摘します。
全国1万人への連続5年間に及ぶアンケート調査の分析結果をもとに最適な「住宅ローン組成と資産形成作」の考え方を提示する、話題の書籍『「金利がある世界」の住まい、ローン、そして資産形成 今までの常識はこれからの非常識? 』より、特別に一部をご紹介します(全2回)。第2回は、持ち家 VS 賃貸で、生涯でかかる費用、支出タイミング、特徴の観点から比較します。
●第1回:ここ20年「所得は伸びず」なのに、「住宅価格はうなぎのぼり」の“ナゼ”…その理由は
※本稿は、丸岡知夫著『「金利がある世界」の住まい、ローン、そして資産形成 今までの常識はこれからの非常識? 』(金融財政事情研究会)の一部を抜粋・再編集したものです。
住まいの命題:「持ち家」と「賃貸」、果たしてどちらが得なのか?
最近、金融機関の窓口へ「家を買うべきか、買わないほうがよいのか決め切れない」といった相談がよく寄せられています。例えば、首都圏に住む30代の世帯からの相談例をみてみましょう。
こちらの家族構成は、片働きで公務員の方とそのパートナーと子ども2 人です。2 LDKの賃貸アパートに10年以上住んでいて、今年春に次女が小学校に入学したのを機に住まいの購入を検討したが、踏み切れなかった、とのことです。何が原因で「踏み切れなかった」のかを伺ってみると、
・子どもの今後の進学先によっては引越しをする可能性があること
・また、住宅価格の高騰により、今の住まいと同程度の間取りの物件なのに多額の住宅ローンを組む必要があること
などが躊躇、逡巡した要因だとのこと。
この家族の「何を目安に判断したらよいのだろうか」という悩みに共感する方も多いのではないかと思います。