銀行サービスを“組み込む”のではなく“溶け込ませる”

――メガバンク、地銀、そしてネット銀行……多様なプレーヤーがひしめくなかで、改めてPayPay銀行の強みとは何でしょうか。

案野 私たちはミッションとして、「金融サービスを空気のように身近に」を掲げています。これは単なるお題目ではなく、成長戦略そのものとなっています。個人から法人まで幅広く、当社のサービスを摩擦なく使っていただくために、冒頭でも申し上げたようにUI・UXを磨き続けていく、それが強みになっていると思います。

木幡 当然、他社もUI・UXについて注力していると思いますが、当社では、一部のスタッフが改善を担当するのではなく、一人ひとりの社員から社長まで、それぞれの視点で「どうすれば摩擦を減らせるか」に取り組んでいます。おそらく、ここまで徹底しているところは少ないのではないでしょうか。

――御社の考える、理想的なUI・UXのイメージはどのようなものでしょうか。

案野 お客さまがやりたいことに、最短距離で、途中で迷わずにまっすぐいける、ということだと考えています。

木幡 銀行サービスでは、「エンベデッドファイナンス(埋め込み型金融)」や「BaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)」が増えていますが、PayPayにおけるPayPay銀行は、あえてそうした言い方をしていません。PayPayの中に組み入れるという感覚ではなく、銀行サービスが“溶け込んでいる”という姿を目指しているためです。いつの間にか銀行にいる、というのがお客さまにとって理想的ではないでしょうか。さきほど、PayPayの本人確認情報と連携することで、最短1分で口座開設申込が可能といいましたが、銀行口座を作るという目的でPayPayのアプリに入ってくるのではなく、PayPayをスムーズに使うために結果的に銀行口座を作ることになった、という状態です。また、そういう状態を作り上げるのが、プラットフォーマーの役目だと捉えています。

案野 重要な点は、UI・UXの改善は、お客さまにとっては利便性の向上に資するものですが、私たち銀行にも大きなメリットがあるということです。事務手続きが合理化されれば、銀行の生産性も上がっていきます。UI・UXの改善を通じて、お客さまと銀行が“ウィンウィン”の関係を築くことができるのです。