実り始めた日本のソフトパワー
これもある種、日本という国に対する海外からの関心を高める起爆剤になるものといっていいかもしれない。日本が持っているソフトパワーだ。
「アルプスの少女ハイジ」というアニメーションをご存じだろうか。今も時々、テレビコマーシャルなどで使われることがある作品なので、日本人の大半が見ればわかるのではないだろうか。
実はこのアニメ、日本国内だけでなく海外でもかなり知られている。というのも、この40年くらいで、日本のアニメコンテンツは世界中に輸出されているのだ。「ONE PIECE」「ドラゴンボール」「NARUTO」「ポケットモンスター」「名探偵コナン」「進撃の巨人」など枚挙にいとまがない。
これらアニメコンテンツを、日本が海外に輸出するようになった当初から観ていた外国人が、現在40代半ばから後半くらいの年齢になっている。日本のアニメに親しんだ外国人は、日本に対してある種の親近感を抱いているケースが多い。
また、コンテンツビジネスという観点から見ても、日本のアニメは面白い。かつては米国のハリウッドが、世界のコンテンツビジネスでは一強であり、アニメの世界でもディズニーが圧倒的な認知度を誇っていたが、今はハリウッドとディズニーだけがエンターテインメントではないのだ。事実、2024年の第96回アカデミー賞では、宮﨑駿監督の長編アニメ映画「君たちはどう生きるか」が長編アニメーション賞を受賞している。さらに、視覚効果賞には山崎貴監督の「ゴジラマイナスワン」が選ばれた。
映画やアニメ、ゲーム、漫画などたくさんのコンテンツがあり、その多くで日本のコンテンツビジネスが、他国のそれを大きくリードしている。商標などを使用する権利もしっかり押さえている。
日本のアニメは続々と世界中に輸出され、世界中の子供たちに観られている。この事実が、日本の未来にとって非常にポジティブな影響を持つようになるはずだ。
今は子供でも、いずれは大人になり、社会の第一線で活躍するようになる。そうなった時に発揮される日本のソフトパワーは、きわめて強力なものになるだろう。
軍事衝突が起こらずに、新冷戦の状態が今後も続くという前提に立てば、日本経済が大きく成長するのは、まさにこれからといってよい。
エブリシング・バブル終わりと始まり 地政学とマネーの未来2024-2025
著者 エミン・ユルマズ
発行所 プレジデント社
定価 1,870円(税込)