<前編のあらすじ>

忍田さんには、吉川さんという同じ大学出身の友人がいる。吉川さんは夢であった起業に向けて資金集めをしていて、忍田さんも吉川さんにお金を貸し付けた1人だった。

ただ、忍田さんには吉川さんが起業に失敗した場合のお金の返済に不安があった。そこで忍田さんは、最近SNSで見た「公正証書」を作成しようと吉川さんに提案し、吉川さんも快諾。貸し付けたお金の返済について、公正証書が作成された。

その後、忍田さんの懸念は的中する。吉川さんからの返済が滞りだしたのだ。はじめのうちは申し訳なさそうな表情で忍田さんに頭を下げる吉川さんだったが、次第に「返済は滞ることが当たり前」といった“あり得ない態度”をとるようになった。

●前編:【「ただ成功を祈っていたのに…」夢を追う友人に“大金”を注ぎ込んだ男性が受けた「あり得ない裏切り」】

ついに返済が途絶える

当初は約束していた期日の前に、吉川さんから忍田さんへ返済が滞ることへの相談があった。しかし、年数を重ねるごとに期日当日になってからの相談になった。4年に入るころには期日後での相談になった。そして、5年目を迎えるころにはついに毎月の返済はされることがなくなっていた。

お金の貸し付けから6年目を経過した日、2人は今後の返済について話し合うためにおよそ1年半ぶりに顔を合わせた。

「返済はもう無理だ」

開口一番悪びれる様子もなく吉川さんが言葉を発した。ろくに目も合わせず投げやり気味のセリフだった。ここで忍田さんの堪忍袋の緒が切れた。

「いい加減にしろ! 当初の約束はどうなった⁉」

それに対して吉川さんは逆ギレする。

「起業は大変なんだ、会社員でぬくぬくしてるお前には分からねえよ!」

喫茶店で会話をしていた2人だが話し合いはろくになされずほぼほぼ水掛け論だ。お金をきちんと返せ、返せないの押し問答。小一時間ほどそれを繰り返し忍田さんの方が身を引いた。

そして忍田さんは決意した。

「そうだ。公正証書を使って差し押さえをしよう」