ファンドにそれぞれの銘柄選定と組み入れ比率の軽重
半導体関連株ファンドは、個々のファンドの運用方針によって運用するポートフォリオは異なる。半導体市場の未来は想定することが難しく、その市場拡大の中で、どの分野に投資することがパフォーマンスにつながるのかについてもさまざまな立場を取り得るからだ。たとえば、歴史もあり、残高も大きな「野村 世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」は、2024年3月末時点の組み入れ銘柄数は25銘柄と限定的な銘柄に投資している。しかも、組み入れ上位10銘柄でポートフォリオ全体の83.8%に投資する集中ぶりで、中でも、筆頭組み入れ銘柄のNVIDIAの組み入れ比率は28.8%と突出している。代表的な半導体株インデックス「フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)」に連動するインデックスファンドでNVIDIAの組み入れ比率は12%程度であるので、それの2倍以上を占めると考えると、比率の大きさがわかる。NVIDIAは、画像処理に特化した半導体「GPU」の世界的トップ企業だが、GPUには演算処理能力が備わっており、従来のコンピューターの頭脳であった「CPU」を代替するのみならず、AI関連の情報処理ではCPUを圧倒的に上回る処理能力を発揮することがわかっている。これから拓けるAI時代の中核を担う存在とみなされている。
また、足元の資金流入額が大きな「半導体関連 世界株式戦略ファンド(愛称:半導体革命)」は、組み入れ銘柄数が45銘柄になる。投資対象を「リーダー企業」「ニッチトップ企業」「新世代企業」の3つに区分し、筆頭組み入れ銘柄のマーベル・テクノロジーの組み入れ比率は4.49%で上位10銘柄の投資比率も合計で約34%と比較的均等に広く投資している。当然、これほど運用の中身が異なれば、この2つのファンドのパフォーマンスもまた違ったものになっていくだろう。
この他、国内の半導体関連企業に特化したファンドもあり、また、半導体関連株に特化したETFの「GX 半導体」と「GX 半導体関連-日本株式」もある。「GX 半導体」は、まさしく「SOX指数(配当込み、円換算ベース)」に連動する投資成果をめざすETFだ。「SOX指数」は、半導体の設計・製造・流通・販売を行う企業30社で構成され、米国の証券取引所に上場している企業で構成されるが、米国以外の台湾TSMC、オランダのASMLやNXPセミコンダクターズも構成銘柄に含んでいる。SOX指数はIT産業の先行きを示す先行指数として知られている。そして、「GX 半導体関連-日本株式」は、原則として国内上場企業で半導体の製造や加工に関連する売上高の比率が50%以上である企業の中から時価総額順で選ばれた最大40銘柄で構成される株価指数「FactSet Japan Semiconductor Index(配当込み)」に連動する投資成果をめざすETFだ。半導体関連市場の今後の拡大に投資したいと考えた場合、その関連するインデックスファンドやETFに投資するというのも方法だ。
デジタル社会に不可欠な半導体、変動は大きいが長期で成長
半導体産業の成長は疑いないことだろう。コロナ禍の後で世界的に進展したデジタルトランスフォーメーション(DX)の流れは、止めようがなく、今後、ますます幅広い産業分野にデジタル化の波が広がっていくだろう。そのデジタル社会を支えるのが半導体だ。ただ、半導体産業が成長するにしても、半導体関連株ファンドがその産業の成長を映して拡大・成長するとは限らない。時価総額上位企業を中心とした大手の半導体関連企業で構成された半導体株インデックスは成長を続けるだろうが、パフォーマンスの大きさでは、指数に含まれない中小型株の方が大きく値上がりするかもしれない。反対に、産業の成長方向を見誤ったアクティブファンドは、業界の成長の波に乗り損ねることもあるだろう。
高い成長率が期待されている産業だけに、株価の動きも比較的大きな値動きになる傾向がある。「AI関連」「宇宙関連」「ロボット関連」など、さまざまなテーマ株ファンドがあり、テーマ株ファンドの値動きは大きい傾向にある。ただ、半導体関連株は「半導体」という業種にフォーカスしているものの、通常の業種別ファンドとも異なる性格を持っている。半導体はあらゆる産業で進むデジタル化を支える社会に不可欠な素材だ。その供給を担う業界の将来が明るいことは間違いない。もちろん、人々の生活に不可欠な食糧を供給する農業が必ずしも収益性に優れた業界とは言えないように、半導体業界に属する全ての企業が成長できるわけではない。その点では、競争を勝ち抜いて巨大化した大企業で構成するSOX指数などは安心感がある。また、業界に精通する調査マンがさまざまな角度から分析した結果に基づいて運用するアクティブファンドにも大きな可能性があるだろう。
半導体産業は、生成AIの登場以来、急速に高まった成長期待でかさ上げされた業績成長という高いハードルが課されてしまい、そのハードルを越えないと「失望」という株価下落のリスクを負っている。それだけに、決算発表時には、期待感の高まりによる株高と、期待に届かない場合の失望による株安が錯綜して関連企業の株価が大きく動きやすい。これは成長期待の強い株式の宿命といえる。四半期ごとにやってくる結果に右往左往せず、5年、10年という長期の展望を持って投資を継続する姿勢が重要だ。