過去4年分の年金が受給できることが判明

年金事務所に行くと、窓口の相談員が丁寧に由里さんの年金について説明を始めました。

「由里さんの年金は61歳から受けられます」

「61歳から65歳までの特別支給の老齢厚生年金は“4年間限定”の年金で、こちらは受給の開始を遅らせることはできません」

「65歳からは新たに老齢基礎年金と老齢厚生年金が受けられます」

これを聞いて「え? 65歳からではなく61歳から手続きして受け取ってもよかったの? もう65歳になってしまったけど……」と不安に思った由里さん。

相談員は「年金の時効は5年です。由里さんは61歳から5年はたっていません。61歳以降在職中の給与も高くないようですし、特にカットされることもなく、特別支給の老齢厚生年金は61歳にさかのぼって過去4年分支払われます」と説明しました。

それまで年金制度の仕組みをよく知りませんでしたが、受け取り損ねた年金をさかのぼって受け取れることに安心した由里さんでした。

喜びもつかの間、相談員から衝撃の事実が告げられる

しかし、その相談員は続けて英一郎さんに対し、とても言いづらそうに衝撃の新事実を伝えます。

「その代わりに英一郎さんが受けている加給年金4年分、つまり150万円ほどを返していただくことになります……」

由里さんに年金事務所までついて行って、急に年金を返せと言われた英一郎さん。状況が読み込めない夫婦は困惑します。

英一郎さんは「受け取れるものだと思って受け取った年金を150万円以上も返さなければいけないって、一体どういうことですか⁉」「自分の年金生活はこれからどうなってしまうんでしょう?」と動揺を隠せません。

●真面目に働き年金を収めてきた由里さんと英一郎さん。いざ夫婦ともに年金生活を始めようというタイミングで、なぜこのようなことが起きたのでしょうか? 後編【「まさか返せと言われるなんて…」突然“年金150万円返納”を要求されてしまった老夫婦の後悔】で詳説します。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。