<前編のあらすじ>

瑞穂(32歳)と雅彦(34歳)は事実婚夫婦。瑞穂が予期せぬ妊娠を告げると「俺は子供は欲しくないよ。産むっていうなら、一緒には暮らすのは難しいかな」という答えが返ってきた。瑞穂は子供がほしい気持ちがあったが、夫は否定的なため、2人は子供を持つことに対する話し合いを避けてきたのだ。夫の態度は変わらず、夫婦の会話はすっかり無くなってしまった。そして瑞穂は「夫が賛成してくれなくても、夫婦生活が終わりになっても子供を産もう」と考えていた……。

●前編:「俺は子供は欲しくないよ」事実婚カップルの意図せぬ妊娠…身勝手な夫に「覚悟を決めさせる方法」

 

マイホームへの招待

会話のなくなった夫婦にとって、一緒に出掛けることは苦痛でしかない。そんなイベントはできる限り避けたいものだが、そうもいかなくなってしまった。共通の知人が郊外にマイホームを建て、そこに招待されていたのだった。そして、夫婦そろってそのことを前日まで忘れていた。子供を産むか産まないかで、それどころではなかったのだ。

決してドタキャンしていいような相手ではない。瑞穂の大学時代の先輩で、現在は編集プロダクションを経営している安西という人なのだが、瑞穂は安西から仕事をもらっているし、夫も仕事で付き合いがあった。そんな人からの招待を当日になって急に断れるわけがない。

瑞穂はひどく面倒な気持ちだった。妊娠をめぐって意見が対立して以来、夫と長時間いると気まずさを感じるようになっていた。

1時間ほど電車に乗り、郊外にある安西のマイホームへと向かった。電車の中で、夫婦はほとんど口をきかなかった。郊外とはいえ駅から程近く、そこまで不便な場所ではないのが救いだった。安西の家は美しいクリーム色の外壁で、新築ながら落ち着いた雰囲気を醸し出していた。