金価格上昇の一方、低迷するプラチナ価格

このように世界的に見ても埋蔵されている量が偏在しており、かつ埋蔵量、これまでの産出量のいずれも少ないために、その希少性から金に比べて高く評価されてきたプラチナですが、この10年ほど、金に比べて価格が低迷しています。

そのため、同レポートにもあるように、「『プラチナ会員』のステータスは維持されるか?」という懸念につながるわけですが、なぜ金価格が上昇する一方で、それ以上に希少性の高いプラチナの価格が低迷続きなのでしょうか。

同レポートでは、「安全資産・インフレヘッジ資産として投資需要が多い金は、世界的なインフレ懸念や地政学リスク・景気減速懸念の高まり、ドル離れを勧める一部中央銀行による金購入などを背景に価格を大きく切り上げた。(中略)プラチナにとっても、同じ貴金属である金の価格上昇は価格上昇要因となるが、プラチナの需要の大半は工業用途であるため、世界的な景気減速(並びに減速懸念)が価格の重石となってきた」と指摘しています。

総需要に対する各需要の比率を見てみましょう。

<金>

・宝飾品・・・・・・48.7%
・工業用途・・・・・・6.7%
・投資・・・・・・21.2%
・公的機関・・・・・・23.3%

<プラチナ>

・自動車触媒・・・・・・41.1%
・宝飾品・・・・・・18.1%
・産業用・・・・・・37.0%
・投資・・・・・・3.8%

以上のようになっています。同レポートが指摘しているように、「プラチナの需要の大半は工業用途であるため、世界的な景気減速(並びに減速懸念)が価格の重石となってきた」のは事実でしょう。

また、それと同時に注目したいのは、金の需要に含まれている「公的機関」です。ここで言う公的機関とは、国が外貨準備として保有している金を指しています。

公的機関が保有している金の需要を時系列でみると、2004年から2009年まではマイナスが続いています。つまり外貨準備で保有していた金を売りに出していたことを意味します。

ところが、2010年を機に公的機関による金の買いが増え始めてきました。トン数で言うと、2010年が79トンの買い越しであり、その後は毎年400トンから600トンの買い越しが続き、2022年の買い越しは1000トンを超えました。ちなみに2023年も1037トンの買い越しです。

金が各国の外貨準備に組み入れられているのは、金を「無国籍通貨」として見ているからです。

ご存じのように、金は非常に高い流動性を持っていて、国際金市場でいつでも売却できます。かつ、多くの国が外貨準備の中心として保有している米ドルは、もし米国政府がデフォルトに陥ったりしたら、その時点で紙切れになる恐れがあります。

でも、金は世界共通の価値が認められているため、米ドル危機が生じたとしても価値を毀損(きそん)するリスクがありません。そのため各国政府は外貨準備に組み入れる金の量を年々、増やしています。この公的機関による買い越し増が、金価格を押し上げてきた側面は無視できません。