長期投資をしても避けられないリスクがある

ただ、この結果を見て、運用期間を長くすればするほどリスクが軽減される、などとは考えない方が良いでしょう。

たとえば全世界株式型の元本割れ確率は、運用期間5年間で25%だったのが、15年間で0%になっています。だからといって、全世界株式型という資産クラスが持つリスクが下がったことにはなりません。

保有期間が5年間、15年間、あるいは50年間だとしても、全世界株式に投資した時のリスクは不変です。運用期間を長期にすると元本割れ確率が下がるのは、基本的にこれまでの株式市場が右肩上がりだったからというだけに過ぎません。

その証拠に、国内株式型の元本割れ確率は、運用期間が5年間で47%だったのが、15年間でも40%までしか下がっていません。日本株が上昇に転じたのは、アベノミクスがスタートした2013年からの10年間であり、それ以前はどん底の状態が続いていたからです。

ちなみに、リーマンショックの前後における資産クラス別の最大下落率を見ると、

・米国株式(2007年10月9日~2009年3月9日)=▲56.0%(▲63.0%)
・新興国株式(2007年10月29日~2008年10月27日)=▲66.0%(▲72.0%)
・日本株式(2007年2月26日~2009年3月12日)=▲61.0%

となっています。ちなみにカッコの中の数字は、円建ての下落率になりますが、たとえば20年くらい運用した先で、この手の大暴落に直面するリスクも当然のことながらあります。

もし、そのような状況に直面した時に、「長期投資はリスクが軽減される」などと言い続けられるでしょうか。そのあたりの想像力を少しだけ巡らせれば、「長期保有すれば投資のリスクは軽減されます」などとは言えないはずです。

話を冒頭に戻しますが、新NISA関連のセミナーで、「長期投資をすればリスクが軽減され、かつ複利効果で大きく資産を増やせる可能性が高まります」などと、臆面もなく説明する「自称」専門家がいたら、その人こそ投資の素人だと認識するべきでしょう。

参考
・ニッセイ基礎研究所「新NISA、50代などからの資産形成はどうするのか」