「家族ありき」の制度下で、何を決断すべきか確認しましょう
この問題の要因は、急速に高齢化が進む日本で、制度だけはまだ「呼べばすぐに駆けつけてくれる家族がいる」前提だからです。日本の制度は『サザエさん』のような「家族が支え合う」時代のままで、時が止まっています。
ところが家族関係が希薄化してきたことに少子化も加わり、家族だけでは到底太刀打ちできなくなってしまったのが現実です。
介護離職からの貧困や、介護疲れからの殺人事件、ヤングケアラー問題、身元不明の火葬できないご遺体や、埋葬されることなく保管されている骨壺の数や無縁仏、さらに荒れ放題のお墓。驚くような報道が、連日のようにされています。それでもなお制度は「家族ありき」のままです。
ただ、行政も多少変わろうとしています。でももうそれが待てないくらい、現場は逼迫しているのです。
混乱の現場では、誰かが善意でサポートせざるを得ない状態です。
「自分の仕事ではないと分かっています。でもだからといって放置はできない」そう言って身寄りのない高齢者の部屋に行き、熱中症にならないようエアコンをつけ、勝手に消さないようリモコンを持ち帰るケアマネジャー。時間外だからと、社用ではなく個人の携帯から連絡してくるケースワーカー。事故物件になって家主に迷惑をかけてはいけないと、毎日のように賃借人の様子を見に行き、誰もいないからと救急車に一緒にのってサポートしている福祉の人たち。
今の状況は本来の仕事ではない、彼らのシャドーワークで成り立っています。国は我慢強い、親切な善意ある人たちに頼りすぎています。でもそれでは、この先ダメなのです。
人の善意だけでは、追いつかなくなる日がすぐそこまで来ています。あと少しすれば、さらに働き手は減り、人手も足りなくなります。気持ちがあっても、手が回りません。それが「少子高齢化」の日本です。
そこにどれだけの人が、気付いているのでしょうか……。もはや備えている人しか対応してもらえない、そんな時代になります。善意に甘えてはいけないけれど、実際のところその善意の手は、確実に足りなくなります。
だからこそ何が問題で、何を決断する必要があるのか、どう備えるのか、そこに気が付いて欲しくて、対策のポイントをお伝えします。
人は意識なく生まれてきます。そして誰もが死に向かって生きています。人は必ず死にます。死ぬ時のことを考えることは、生きることを考えることでもあります。これは、決してマイナスなことではなく、むしろ前向きでワクワクすることです。
結婚していようとしていまいと、子どもがいようといまいと、パートナーがいようといまいと、そんなことは関係ありません。人生を楽しく生き抜くために、自分の人生を自分で決める。個々が自立する。そうあるべきだと、私は考えています。
そういった問題に備えるきっかけとなり、最期まで人生を謳歌してくれる人が増えれば、これほど嬉しいことはありません。
●第2回(「亡くなった時がいちばんお金持ち」になってしまう!? “不安でお金を貯めこむ”人の盲点とは)では、自分の貯めたお金は最期まで自分のために使えるようにする具体的なポイントについて解説します。
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