正常化へ向かう観光業

「宿泊旅行統計調査」の結果を受けた分析が、9月1日公開のニッセイ基礎研究所 経済研究部所属の安田拓斗研究員によるレポートにも書いてあります。

レポートによると、「日本人延べ宿泊者数は全国旅行支援が開始された2022年10月以降、堅調に推移している。全国旅行支援は2023年1月10日以降、割引率を40%から20%へ下げ、割引上限額を交通付宿泊旅行の場合は一泊5,000円、それ以外の場合は3,000円、クーポン券は平日2,000円、休日1,000円として運営されてきた。(中略)47都道府県のうち半分以上が8月末までに全国旅行支援を終了しているうえに、同制度を継続している県の大部分では、貸切バスでの団体旅行のみが対象と対象範囲が狭まっている。また、今後は全国旅行支援を終了する県がさらに増加していく」と書かれています。

全国旅行支援は、確かに日本人の旅行熱を高めるきっかけにはなりましたが、すでにそれは、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類にダウングレードされたことで、縮小へと向かっています。

それでも日本人延べ宿泊者数が伸びているのですから、カンフル剤を投与しなくても、いよいよ観光業も正常化へと向かいつつあることを示していると考えられます。

人手不足が深刻化した理由

ただ、観光客が戻ってきたことによって気になるのが、宿泊業の人手不足問題です。

帝国データバンクの「特別企画:「旅館・ホテル業界」 動向調査(2022 年度)」(2023年7月3日)という、ホテル・旅館業の約100社を対象にした調査によると、人手不足だと答えた企業の割合は上昇傾向をたどりました。4月は正社員で75.5%、パートや派遣などの非正規社員で78.0%の企業が、人手不足だと回答したとのことです。

なぜここまで人手不足が深刻化したのかというと、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化した時期、多くの宿泊施設が稼働率の大幅低下で人員削減を行ったからです。

当然、削減された従業員は、そのままでは食べていけませんから、他の業種へと転職をはかります。結果、フロントや配膳、清掃などの業務で人員逼迫が深刻化しているのです。