30歳以下はインフレ未体験

読者の中で、30歳より若い方たちは生まれついてこのかた、モノの値段が上がる、少なくとも同じモノの値段が毎年上がるという経験はほぼ無いのではありませんか。

論より証拠。こちらのグラフを見てください。

これは、第二次世界大戦が1945年に終結した2年後の1947年から2022年までの日本の消費者物価指数の推移です(総務省統計局のデータを基に労働政策研究・研修機構が作成)。コロナ禍が始まった2020年を100とした指数で、1990年代前半までは相当の右肩上がり。その後はほぼフラットです。

今年30歳になる方たちが生まれたのは1993年で、このあたりからカーブは水平になり、若干の上下動はあるものの、以後30年間は物価水準が全く上がらない時期が続いてきたわけです。

またニッセイ基礎研究所・経済研究部准主任研究員の山下大輔氏が執筆したコラムの中にIMF(国際通貨基金)のデータを基に算出した大変興味深い数字があります(2022年12月公表)。それによると、日本の1987年の消費者物価を100とすると2022年には120.5となり、35年間で物価は約2割上昇したことになります。

この時期、世界各国はどうだったのか。

日本以外のG7各国(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、英国、米国)で同様の計算をすると、この35年間で2倍から2.5倍になったとのこと。

バブル崩壊後の日本は1990年代後半以降、前年比の物価上昇率がゼロからマイナス1%台にまで落ち込んだわけですから、この時期以降の状況がいかに特異なものだったかが分かります。