大規模リストラで世界トップクラスのヘルスケア企業へ変身

デジタルカメラの普及で稼ぎ柱を失った富士フイルムは、軸足を医療領域や高機能材料へ移します。写真やフィルムの企業として培った技術を生かし、医療向けでは画像診断システムなど、高機能材ではディスプレーに用いられるフィルム材などを重点戦略と位置付け、経営資源を集約させました。

思い切った事業転換は奏功し、富士フイルムの業績は回復に向かいます。現在では内視鏡といった医療機器の販売やバイオ医薬品の開発などを請け負う「ヘルスケア」が同社の主力事業となりました。医療用画像情報システム(PACS)や医薬品受託開発事業(CDMO)など、世界トップクラスのシェアを持つ領域も多数生まれています。

【富士フイルムHDの純利益(2011~2023年3月期)】

 

出所:富士フイルムホールディングス 有価証券報告書および決算短信

【セグメント別の業績(2023年3月期)】

 

出所:富士フイルムホールディングス 決算説明会資料

もちろん、この改革は簡単なものではありませんでした。2010年3月期までの5年間でおよそ3900億円もの構造改革費が発生したほか、大規模な人員削減にも踏み切っています。

痛みを伴う改革を断行したからこそ、今日の富士フイルムがあるといえるでしょう。