懐は意外に厳しい?「アラブの春」後のエジプトを襲った経済危機
競合する航路がないスエズ運河の優位性は強く、エジプトは通行料の値上げを繰り返してきました。2021年は過去最高となる約63億ドルの収入があったとみられています(出所:ジェトロ)。
これほど安定した収入があるエジプトですが、近年は苦境が続いています。エジプトは2011年、チュニジアで始まった民主化運動「アラブの春」の影響でムバラク大統領が退陣し、それまでの独裁政権が崩壊しました(エジプト革命)。
民主化は喜ばしいことですが、経済には強い混乱が生じました。主要産業の観光が大きな打撃を受け、経済成長率は大きく低下。エジプト革命後に発足したムルスィー政権は退陣に追い込まれます。
2015年に国民投票でエルシーシ大統領が選出されるも、事態の打開には至りません。観光収入が見込めず外貨準備不足が深刻化し、2016年にIMFへ支援を求めました。同年11月、エジプトは支援の条件として求められた為替の変動相場制へ移行します。その結果エジプトポンドは急落し、20%を超える著しいインフレが発生しました。
【エジプトポンド円(月足、2015年12月~2017年12月)】
【エジプトのGDP変化率とインフレ率の推移(2010年~2020年)】