なぜ卵は値上がりしたの?

イセ食品は業界トップクラスの供給量を誇っていただけに、破綻したことで一部では卵の値上がりを懸念する声も聞かれました。もっとも、イセ食品は当面の運営資金を賄うための融資契約を締結できたことから、同社の供給に大きな影響はないとみられています。

しかし、それでも2022年は卵価格が大きく上昇しました。2022年1月では1キログラムあたり約150円でしたが、2023年1月では約280円となっています(全農:東京Mサイズ)。

【鶏卵価格の推移(全農:東京Mサイズ)】

日本養鶏協会「鶏卵価格の年次別月別推移」より著者作成

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なぜ卵の値段は上がったのでしょうか。大きな理由と考えられるのが鳥インフルエンザです。2022年度は鳥インフルエンザが過去最悪の水準で発生しており、2023年2月20日までに約1478万羽が殺処分の対象となりました。「畜産統計」によると採卵鶏の数は約1億8000万羽(2022年2月時点)ですから、全体の約8%が失われたことになります。このため卵の供給が細り、価格の上昇を招いたと考えられます。

野村農林水産大臣は2023年2月に会見を行い、鳥インフルエンザの影響は半年程度続く見解を示しました。

(発生農場では殺処分の終了後、)鶏舎の消毒をして、そして3カ月待ってからヒナを導入していきます。様子を見ながら。実際ヒナが成鳥になって、親鳥になって卵を産み出すのは、3カ月の空舎期間とそれから3カ月の育成期間、6カ月しないと卵を産まないので、あと半年は待っていただかないとと思っているところです。

出所:農林水産大臣 野村農林水産大臣記者会見概要(2023年2月17日)

また飼料の高騰も、卵が値上がりした要因の1つです。養鶏用の飼料価格は近年上昇傾向にあり、特に2022年はウクライナ情勢に伴う穀物価格の高騰などから顕著に値上がりしました。この生産コストの増加が価格に転嫁され、卵が値上がりしたと考えられます。

【養鶏用配合飼料(バラ)の工場渡価格】

農林水産省「飼料月報」より著者作成

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