銀行株の配当利回りが継続なら「老後資金」の課題も解決か
唯一、銀行に投資する意味があるとしたら、配当利回りを狙う場合でしょう。
2月10日時点の株価で計算した配当利回りは、あおぞら銀行がトップで5.83%です。仮に配当利回りが5.83%もある状態が続けば、「老後2000万円問題」は解決します。
老後2000万円問題とは、夫65歳、妻60歳の無職世帯が30年間、夫婦とも健康に生活する前提のもと、平均的な実収入額が20万9198円、消費支出と非消費支出の合計額が26万3718円とすると、差額の5万4520円が毎月不足するため、年間で65万4240円、30年間で1962万7200円(約2000万円)が不足するという話です。
これは金融審議会の市場ワーキング・グループが作成した報告書によって、世間に一気に広がったわけですが、この時は「2000万円なんて大金、貯蓄できるはずがないだろう!」といった声ばかりクローズアップされ、いささか感情的な報道が目立ちました。
そもそも、月5万4515円が不足するからといって、わざわざその30年分に相当する約2000万円を目標に貯蓄を進めようとするのは、従来の日本人にありがちな資産形成の考え方です。仮に運用できるとしたら、それだけの資金は必要なくなります。
例えば「年5%の配当利回りで、年間65万4180円の配当金を得るのに必要な投資元本は、いくらか」を考えてみましょう。この場合、投資元本を計算するためには、1年で受け取りたい配当金額である65万4180円を、5%の配当利回りで割り戻せばいいのです。計算式は次の通りです。
65万4180円÷5%=1308万3600円
もし年4%の配当利回りなら、次のようになるでしょう。
65万4180円÷4%=1635万4500円
つまり、想定する配当利回りを年4%まで下げたとしても、老後必要なお金は2000万円ではなく1635万4500円で済むのです。
この方法の良いところは、配当利回りがほぼ変わらなければ、投資した元本を取り崩すことなく継続して同じ額の配当金を受け取れる点でしょう。
もし2000万円を貯めたとして、それを取り崩しながら月々の生活費にあてる場合、30年が経過した時点で資産はゼロになってしまいます。また、30年よりも長生きしてしまったら、今度は資金不足に陥るリスクが高まります。
このように、2000万円というストックを確保して徐々に取り崩す方法だと、どこかで必ず資金はゼロになりますが、キャッシュフローで資金不足を賄えれば、元本を減らさずに済むのです。その代わり、投資した企業が倒産する、もしくは他の企業に吸収されるといったリスクは必ず理解しておく必要があります。
その点を考慮に入れられるのであれば、配当利回りの高い銀行株に投資するというのは、老後資金を賄うひとつの方法だと考えられます。