三井住友トラスト・アセットマネジメントが投資家に向けて定期的に発信している「投資INSIDE-OUT」のVol.232では、最近注目が集まっている銀行株に対する見方を提示しています。

金融緩和政策の見直しで、銀行株の株価が上昇

銀行株はこのところ株価上昇が目立ってきました。あるアクティブ型投信を設定・運用している投資信託は、銀行株の組入比率を10%にまで引き上げてきています。

理由は昨年12月20日に行われた金融政策決定会合で、金融緩和政策の見直しを決定したからです。

具体的には、10年物国債利回り(長期金利)の誘導水準に対する振れ幅を、上下0.25%にしていたのを、上下0.50%に拡大するという内容でした。その結果、市場では日銀が長期金利の上昇を容認したものと捉え、長期金利に上昇圧力がかかったのです。

かつて消滅した金利は、世界的に復活してきている

銀行株といえば、割安銘柄の代表格です。PBRでみると1.0倍を大幅に下回っている銘柄も少なくありません。実際、2007年のサブプライムショック、2008年のリーマンショックを経て大きく値下がりした株価は、その後も大きく回復していないのです。

メガバンク3行の株価を見ても、三菱UFJフィナンシャルグループの株価は半値を回復していますが、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの株価は、半値を大きく下回っています。

ここまで銀行株が売られた理由の1つは、サブプライムショックとリーマンショックを機に、特に先進国を中心にして金利が消滅したからです。米国やユーロ圏、そして日本は、政策金利を限りなく0%まで引き下げるどころか、時によってはマイナス金利にまで低下しました。

銀行の主要業務は「利ざや」を稼ぐことですから、金利が無くなれば当然収益力も低下します。その結果として、将来の収益力に対して期待感が薄らいだ銀行株が売られたというわけです。つまり、昨年末から日本の銀行株が買われているのは、徐々に金利が上昇してきたからだと言えます。

世界全体で見ても、すでに海外では、米国をはじめ、ユーロ圏でも急激なインフレへの対抗措置として、連続した政策金利の引上げが行われている最中です。世界的に再び金利が生まれてきたことで、銀行の収益拡大への期待が高まり、銀行株に投資する動きが強まっているのです。