かつては公社債投信に人気集中

ちなみに1990年代に入って国内株価が暴落し、平成不況に突入した当時は、株式投信よりも公社債投信が主流でした。当時は今に比べて金利水準の高かったため、預貯金に比べて相対的に高い利回り水準が期待できた公社債投信に、人気が集中したからです。

それが再び株式投信中心になったのは、公社債投信の中心的存在だった中期国債ファンド、MMF、短期公社債投信、長期公社債投信、長期国債ファンド(トップ)が、元本割れを起したり、超低金利の影響で運用成績が低下したりした結果、投資家が離れてしまったことが理由です。

投資信託の純資産の要因分析も掲載

ファクトブックには、投資信託の純資産の要因分析も掲載されています。純資産総額の増減が、「収益分配額」、「資金増減額」、「運用増減額」に分けてグラフ化されています。

収益分配はマイナス幅減少の傾向

収益分配はファンドの純資産総額からキャッシュアウトするものなので、どの年においても常にマイナスになるのですが、昨今の傾向としてはマイナス幅が減少しています。

たとえば2015年は6.4兆円のマイナスでしたが、2022年は3.2兆円のマイナスでした。これは、毎月分配型など分配を行うタイプのファンドが減ったからだと思われます。

資金増減額は2012年以降プラスが続く

資金増減額は、購入によって資金流入した額と、解約や償還で資金流出した額の差です。これは2012年以降2022年に至るまで、すべてプラスでした。

ちなみにこの10年間で最も資金流入額が大きかったのは2015年の12.6兆円で、2022年は8.8兆円でした。

運用増減額はおおむね10兆円前後のプラス

また運用増減額はその年のマーケット動向に大きく左右されます。この10年でマイナスになったのは2015年、2018年、2022年の3回で、2015年が2兆円のマイナス、2018年が11.7兆円のマイナス、2022年が12.9兆円のマイナスでした。

2018年と2022年の運用減が大きいのですが、とはいえ他の年ではおおむね10兆円前後のプラスが出ており、特に2019年は16.2兆円、2021年は17兆円にも達しています。

過去のケースが将来にも当てはまるかどうかは何とも言えませんが、少なくともこの10年のケースで考えると、昨年のように大きなマイナスが運用面で生じたとしても、長期保有に徹すれば、徐々にマイナス幅が埋まり、プラスに転じる可能性が高いと考えられます。

一度解約してキャッシュにすると、マーケットが上昇局面に転じたとしても、なかなか新たに買うことができず、結果的に実現損を回復するチャンスを失うことになりかねません。その意味でも、投資信託はマーケットが下がったからといって解約するのではなく、そのまま保有し続けることを心がけるのが良いと言えるでしょう。