さらに幅広くサステナブルファイナンスへ

現在、このようなサステナブル投資は、さらに拡張したサステナブル金融という枠組みの一つとして捉えられるようになってきました。企業への資金の提供の形は、株式を通じて企業のオーナーになり返済の保証がなくとも企業の成長を応援するという形や、株式ほどリターンは高くないものの債券という将来返済の約束をする証券への投資、銀行を通じた融資の形などさまざまです。そこに携わる運用会社、証券会社、銀行や地域金融のプレーヤーが社会の持続可能性を高めるために企業を見極め、環境負荷低減などに向けた事業や商品へと資金の流れを積極的に作り始めているのです。

この流れは2016年頃から欧州で始まり、ここ数年は日本でもサステナブルファイナンスという言葉で知られるようになりました。社会の持続可能性に配慮するのと同時に、金融機関自体の在り方(ビジネスモデル)も持続可能でなければ、金融業が成り立たないばかりでなく、経済のベースとなっている金融システム自体が危うくなるという業界全体の危機感もこの流れを後押ししています。

図表:サステナブルファイナンスとサステナブル投資の関係 
 
 

※図は筆者作成

私が参加する金融庁の有識者会議では、サステナブルファイナンスに関する報告書(https://www.fsa.go.jp/news/r4/singi/20220713/20220713.html)を2回ほど公表し、この流れを手堅く推し進めていく仕組みや参加者への期待値についてまとめています。「個人に対する投資機会の提供」では、今後個人の投資家がより安心してサステナブル投資を行えるように、ESG投信の実態とネーミングの差異などからおこるグリーンウォッシュへの注意喚起を金融機関に対してしています。これは、ESG投資が広まったことで出てきたもので、おそらく5年前には存在していなかった課題です。このように日進月歩で変化するサステナブルファイナンスの世界では、金融機関自身も進化を求められているのです。