2022年4月から高校の家庭科の授業に金融教育が盛り込まれました。三井住友トラスト・アセット・マネジメントが定期的に出している「投資INSIDE-OUT<投資の裏側>」vol.228では、「金融教育で若者のマインドはどう変化した?」と題し、金融広報中央委員会の「金融リテラシー調査(2022)」を用いて、金融教育の成果が出ているのかどうかを分析しています。

金融教育を受けても「短期目線の投資行動」になりがち

それによると、「学生の株式投資経験者の割合は金融教育の有無で大きな差があり、投資への第一歩を踏み出させる動機付けとして一定に成果はあったと言えそうです」ということでした。この結論の根拠である金融リテラシー調査(2022)の数字によると、「株式を購入したことがある」という回答比は、金融教育ありの学生が24.4%、金融教育なしの学生が9.0%と、差が歴然としています。

また、「商品性を理解せずに投資信託を購入した」の回答比では、金融教育ありの学生が37.7%、金融教育なしの学生が44.6%、「商品性を理解せずに外貨預金等を購入した」の回答比では、金融教育ありの学生が45.7%、金融教育なしの学生が57.8%であり、確かに金融教育ありの学生の方が、金融教育なしの学生に比べて、商品性を理解せずに投資信託を購入したり、外貨預金に預けたりする割合が低くなるものの、同レポートでは「その差は小さく、教育の効果はまだまだ不十分との印象です」としています。

他の特徴を見ると、「損失回避傾向が強い」については、金融教育ありの学生が61.0%で、金融教育なしの学生が76.2%ですから、金融教育を受けた方が積極的にリスクを取りにいく傾向が見られます。

ただ、「近視眼的行動傾向が強い」については、金融教育ありの学生が48.8%で、金融教育なしの学生が42.9%。「横並び行動傾向が強い」については、金融教育ありの学生が31.1%で、金融教育なしの学生が26.5%となっている点は興味深いところです。

金融教育を受けたにも関わらず、投資をするうえでは避けた方が良いとされる「短期目線の投資行動」、「横並びの投資行動」を取ろうとする人が多いのは不思議です。同レポートでは、この点について「足元で株価が大きく上がっているとか、単に友人が買っているといった理由で投資を始めるようだと心配になります」と指摘しています。金融の知識を得ることが、「手っ取り早く儲けてやろう」という意識につながっているとしたら、本来の金融教育の狙いから大きく外れてしまいます。この点は憂慮するべきことでしょう。