低金利時代を反映し定期預金の構成比は大きく減少

ちなみに直近の動きを見ると、2020年3月末が1815兆2239億円だったのが、2021年12月末に2014兆759億円で2000兆円台に乗せ、過去最高になった後、2022年9月には2004兆9176億円となっています。

家計部門における金融資産の総額をグラフで表示すると分かるのですが、2020年前後から上昇カーブが急になっています。つまり個人金融資産の増額ペースが速まっているのですが、これは新型コロナウイルス感染拡大期に、さまざまな名目で補助金、助成金、給付金が支払われたからです。これらの資金が各人の預金口座に振り込まれた結果、現金・預金の残高が大きく伸び、個人金融資産の2000兆円乗せに影響としたと考えられます。

以上が、資金循環統計のこれまでの流れですが、同レポートでは、資金循環統計をベースにして、さらに細かい分析を行っています。

まず、「家計金融資産の種類別構成比」ですが、資金循環統計の「現金・預金」という項目を、預金の預入が自由な普通預金などの「流動性預金」、預入期間が決まった定期預金などの「定期性預金」、「その他の現金・預金」に分けて、2017年から2021年までの推移を見せています。

注目点は「流動性預金」と「定期性預金」の比率です。2017年時点における流動性預金の比率は23.1%で、これが2021年には29.4%まで上昇する一方、定期性預金は23.7%から19.3%まで低下しています。周知のように、現在の預貯金金利は極めて低く、メガバンクで普通預金利率が年0.0010%。定期性預金は預入期間の長短、預入金額の多寡に関係なく一律年0.0020%を提示しているところが大半です。

この超低金利では、収益面で定期性預金を選ぶインセンティブがないことを意味しています。より高い利率が得られるからこそ、多少換金性が犠牲になっても定期性預金を選ぶわけですが、実際に受け取れる利息の差がこれだけ小さいと、流動性に勝る普通預金の方が良いと判断する個人も多いと考えられます。