あなたがそのバルブ企業で経理担当をしているとします。営業職と違って、オフィスの中で数字と格闘しているあなたからすると、誰が顧客なのかを強く意識することはないかもしれません。しかしあなたの仕事が誰の課題を解決しているか、という視点で考えれば、経費精算書や領収書をメールで提出してくる営業担当者が顧客の一人のはずです。

であれば、「計算が苦手な人でもより早く正確に経費精算できるようにするにはどうしたらいいか?」ということを考えるべきです。そういうシステム面での改善を考えた場合、企業内でのITシステム部署の担当者もあなたの顧客の一人です。

このように、どのような企業・職種であっても必ず「顧客」が存在し、そこには解決するべき問題があります。なぜなら経済活動はすべて問題解決だからです。もし、あなたが今やっている仕事の顧客が見当たらなければ、すぐにでも上司に「この仕事は何のためにやっているのでしょうか」と質問し、顧客が特定できなければすぐにでもその仕事をやめるように進言するべきです。顧客が具体的に思い浮かばない仕事など無駄以外のなにものでもありません。その無駄を取り除く提案そのものが、その組織にとって付加価値のある問題解決なのです。

あなたが20代のビジネスパーソンであれば、知識・経験が浅いことから、その提案は荒唐無稽なものになるかもしれません。実績がないことから組織における採用可能性はとても低いものになるでしょう。しかし、常に顧客のことを具体的、分析的に考える癖はあなたが経験を積んでいく中で必ず生きてきます。そういった顧客向けソリューションを考える上で、本書が提唱する「インベスターシンキング」は土台となるものであることを確信しています。