投資信託を保有する理由に、短期値上がり益を狙う割合が減少

なお、回答比の推移で大幅に下げているのが「短期の値上がり益を期待して」の項目です。2012年の時の回答比では、「長期にわたっての資産運用として」という回答比とほぼ同率でトップ回答でしたが、2021年は上から5番目の回答比になりました。「投資信託は短期の値上がり益を狙うための商品ではない」という認識が広まっているのは喜ばしいことです。

一方、60歳以上の購入理由は、20-59歳までの回答割合とやや異なります。特に2012年から2018年までは、「定期的に分配金が受け取れるから」が最も高い回答比でしたが、2015年をピークにして徐々に低下傾向をたどり、2021年には「長期にわたっての資産運用として」の回答比と逆転しています。これによって、60歳以降も投資信託を長期投資の対象として捉える人が徐々に増えていることが分かります。これも前述したように、「人生100年時代」の意識が強まってきたからでしょう。実際、60歳から資産運用をスタートさせたとしても、たとえば80歳までなら20年ありますから、十分に長期投資に耐えられるというわけです。

最後に特筆すべきなのが、「ESG」や「SDGs」をテーマにした投資信託についてです。一時期、「ESG」や「SDGs」関連の投資信託が多数設定、運用されました。ある意味、社会貢献をテーマに据えた投資信託だったわけですが、購入理由を見ると、最も回答比が低いのは、「投信の購入を通じて社会貢献ができると考えたから」です。これは20-59歳と60歳以上という年齢別、そして2012年から2021年までの各年においても、最低の回答比になっています。

別な言い方をすると、「ESG」や「SDGs」をテーマにした投資信託が人気化したのは、「そのテーマなら儲かるかも知れない」と考えた人が多数いたということなのです。これはいささか皮肉な結果と言わざるを得ない状況です。