コロナ禍で関心が高まった地方移住も、最近では回帰する傾向に

次に、属性別のなかで「引越しに関心を持っている/関心を持つようになった」という回答比が最も高かった「東京圏・テレワーク経験者」のなかで、引越しに関心のない人たちが挙げた理由を見ると、最も高かった理由が「現在の生活環境(買い物、交通、教育、医療機関等)に満足しているため」で63.0%を占めました。これに次いで、「引越ししたからといって、新型コロナウイルスの感染リスクは減らないと思うため」が28.8%、「旅行は良くても、暮らすことは別だと思うため」が23.9%となりました。

加えて、同レポートによると、「コロナ禍で半ば強制的に始まったテレワークは、徐々に実施率が低下するとともにオフィスワーク回帰の動きが強まっており、その傾向は現在も続いている」としています。具体的な数字として、第一生命経済研究所が2022年5月に実施した「なぜ、人はオフィスに戻るのか」レポートや、日本生産性本部が7月に実施した最新の調査結果でも、テレワーク実施率が、2020年5月の第1回調査実施以降で最低を記録したとしています。

こうした人の流れは、地価にも反映されています。先日、7月1日時点の全国2万1444地点の地価を調べた「都道府県地価調査結果(基準地価)」の結果が発表されました。ニュースなどでご覧になられた方もいらっしゃるでしょう。全国平均で見ると、住宅地は前年比0.1%の上昇、商業地は同0.5%の上昇、工業地は同1.7%の上昇となりました。

上昇率の高さを不動産取引のモメンタム(勢い)と考えるのであれば、住宅地と工業地は新型コロナウイルスの感染拡大が始まる前の状態を取り戻しつつあります。新型コロナウイルスの感染拡大が始まったのが、2020年に入ってからなので、2019年7月1日を基準日とした基準地価には、新型コロナウイルス感染拡大の影響は、反映されていません。2019年7月1日時点の全国平均値は、住宅地が0.1%の下落、商業地が1.7%の上昇、工業地が1.0%の上昇でした。

そして2022年7月1日時点は前出の通りで、住宅地と工業地の上昇率はコロナ前を上回っています。

ただ、商業地はまだまだ厳しく、全国平均で見ると、2019年7月1日時点が1.7%の上昇だったのに対し、2022年7月1日時点は0.5%の上昇に過ぎません。取引の勢いという観点からすると、まだまだコロナ前の状態には達していないのが現実です。