〈前編のあらすじ〉

相談者の浜川秀子さん(仮名)は関東の地方都市に住む78歳の女性。自動車整備工場を営んでいたご主人を約15年前に亡くし、今は1人で年金生活を送っています。
自動車整備工場は長男が継いでおり、工場の敷地内に長男夫婦の住む家と秀子さんの家が別々に建っています。ただ、秀子さんと長男夫婦の間にはほぼ会話はなく、秀子さんは孤独感を募らせていました。

そんなある日、秀子さんの元にかかってきた1通の電話――それは、いわゆる「オレオレ詐欺」でした。秀子さんは若干の違和感は感じつつも、優しい言葉にだまされてしまい、300万円を失いました。

そのことをなじみの銀行員に話したところ、一時払いの外貨建て保険の提案をされました。「預貯金では詐欺被害に遭ったときにすぐに下ろせてしまうから」との思いやり(?)からだそうですが……本当に必要かどうかよく分からない秀子さんは、FP相談にやってきました。後編では、保険の詳細と秀子さんは加入すべきかどうかを検証します。

●前編『70代女性の悔恨…長男夫婦と“同じ敷地”暮らしが招いた「悲惨な事態」

提案された保険の内容

以下は、秀子さんが提案された保険の内容です。

保険種類:米ドル建て一時払い終身保険

一時払い保険料:5000万円
※契約時に一括で払う

死亡保険金額:50万米ドル

提案された時点の為替レートは、1米ドルが約115円でした。

5000万円を保険料として一時払いし、保険料の運用や死亡保険金は米ドル建てで計算されます。仮に死亡時も同じレートだとすると、保険金は日本円で約5750万円となります。

途中で解約した場合、期間の経過に応じて解約返戻金が受け取れます。この保険は、契約後すぐに解約すると、解約返戻金は保険料を大きく割り込みます。解約返戻金が支払った保険料を上回るのは契約後5年目以降です。

秀子さんの財産は自宅の建物と預貯金約7000万円で、年金収入は月額で約18万円です。今のところ年金だけで生活できていますが、将来、施設に入るかもしれないのでそのためのお金を取っておきたいと考えています。また、一方で折り合いの悪い長男夫婦に自分のお金を使われたくない思いもお持ちです。

そうなると、確かに今のうちに保険に加入してしまうことも1つの方法ではあります。現金を保険に変えられ、しかもまとまったお金が必要になれば解約もでき、また解約せずにいれば最終的に秀子さんがお亡くなりになった際、指定の「受取人」に保険金を受け取ってもらえます。ただ、大前提として、秀子さん自身が「このお金を使いたい」となったときに、解約のジャッジと手続きができることが必須です。