なぜREITが破綻したのか

ニューシティ・レジデンス投資法人が破綻した直接の理由は資金繰りです。借入金を返済する目途が立たなかったために、法的整理となりました。

REITが物件を取得する場合、その費用は融資などで賄い、返済は再び借り換えで対応するケースが一般的です。このためREITは負債が大きくなりやすい傾向にあります。ニューシティ・レジデンス投資法人の場合、2008年2月期時点のLTV(有利子負債総額÷総資産)は54.8%に達していました。

またREITは利益のほとんどを投資家に分配するため、内部留保が残りにくく、資金繰りに窮しやすい面も持っています。同じく2008年2月期におけるニューシティ・レジデンス投資法人の財務を見てみると、流動負債(短い期間に返済する負債)は507億2645.3万円、流動資産(現金化しやすい資産)は84億206.9万円でした。端的にいうと、手元に84億円ほどしかないにもかかわらず、近いうちに約507億円を返済しなければいけないという状況です。

ニューシティ・レジデンス投資法人は、借り換えで返済を賄う計画だったと考えられます。しかし当時はリーマンショックで金融市場が混乱していたこともあり、ニューシティ・レジデンス投資法人は借り換えに失敗しました。返済資金に充てるため約12億円の損を出しながら3つの物件を売却したものの、さらに到来する返済の目途が立たない状況に陥ります。このような経緯で、ニューシティ・レジデンス投資法人は法的整理に追い込まれました。

ニューシティ・レジデンス投資法人は、「ビ・ライフ投資法人(現・大和ハウスリート投資法人)」に合併され、2010年4月に解散します。ニューシティ・レジデンス投資法人を保有していた投資家には、1口あたり0.23口のビ・ライフ投資法人投資口が割り当てられました。

大和ハウスリート投資法人は合併後に1:2の分割を2回行っているため、現在まで保有しているなら大和ハウスリート投資法人投資口を0.92口保有していることになります。2022年10月3日時点における大和ハウスリート投資法人の終値は30万3000円で、0.92口の価格は27万8760円です。破綻したニューシティ・レジデンス投資法人の最終価格(1万4200円)から大きく回復しました。当時から保有し続けた投資家は、むしろ資産を増やせたようです。