TOB(公開買い付け)とは?
ZホールディングスがZOZOを子会社化する際に行った「TOB」(公開買い付け)とはどのような手法なのでしょうか。
TOBは、ある株式を大規模に買い集める際に用いられる手法の1つです。公告などを通じて買い取り価格を提示し、その条件で売ってくれる株主を広く募集します。ZホールディングスがZOZOに対して行ったTOBでは、ZホールディングスがZOZO株式を2620円で買い取る条件で募集しました。
どうしてTOBが行われるのでしょうか。理由の1つに、短期間で株式を買い集められるメリットがあります。
株式は市場で買い集めることもできますが、短い期間で一気に買い集めると株価が高騰し、買収費用が巨額になりかねません。これを防ぐために時間をかけて少しずつ買い増し続けても、「大量保有報告書」(※)の提出義務から買い集めが周囲に知られる可能性が高く、やはり株価は上昇しやすいと思われます。
※大量保有報告書:発行済株式数の5%超を取得することになった株主に提出が義務付けられる書類
そこで、買い手が買い取り価格を提示し、多くの株主から一度に買い集めようとするものがTOBです。買い取り価格は一般に市場より高い価格が提示されますが、買い手が買い取り価格を提示するため、費用をコントロールしながら短期間に買い集めることができます。
また、TOBは少数株主を保護する規制としても見ることができます。誰かが企業を支配するために市場外でひそかに株式を買い集めると、他の少数株主に損害が生じるような不公正な取引が発生しかねません。そこで、市場外で一定以上の買い集めを行う際は、TOBを行うよう金商法で義務付けられています。
TOBは均一な価格で買い取りが実施されるため、特定の株主を優遇するような取引を防ぐことができる上、買い集めの事実を周知させることができます。他の少数株主に情報の提供と売買の機会を与える目的で、TOBが義務付けられているのです。
なお、TOBが実施されたとしても、株主は必ずしも応じる必要はありません。そのまま保有し続けてもよいですし、TOBに応じず市場で売却することも可能です。TOB期間のZOZO株式においても、市場で売買された形跡が見られました。当初はTOB価格2620円を下回る価格で取引されていましたが、最終日に向かって株価は上昇しています。
【TOB発表後のZOZO株価の推移】