利上げの理由は加速するインフレ

FRBが利上げを急ぐのは、ロシア・ウクライナ問題によって引き起こされたインフレの影響が大きい。ロシアの軍事侵攻をきっかけに、多くの国がロシアへの経済制裁として禁輸措置を行った。豊富な資源を持つロシアからの輸入が減少したことで、供給に対する不安が高まり、原料不足によって価格が上昇するコストプッシュ型インフレが世界で進行して深刻化を見せている。

その影響を受けて、金利を決める際の重要な指標のひとつである米国のCPI(消費者物価指数)は、6月には前年同月比9.1%と非常に高い数値をマークした。米国でCPIの前年度比が9%以上となるのは約40年ぶりのことだ。

また、コロナの影響によるサプライチェーンの混乱の長期化が物流コストの高騰を引き起こし、インフレを促している。

一方で米国の失業率は、コロナ禍当初の深刻な状況から回復を見せている。米労働省が発表した7月の雇用統計では、失業率は3.5%となり、コロナ禍以前の水準にまで下がった。

FRBは「物価の安定」と「雇用の最大化」を活動の目的としているため、コロナからの経済回復による失業率の低下が、物価の安定へ向けた利上げに踏み込むことを後押ししたとも考えられる。